「ローテの谷間」の日のカギを握る存在のアドゥワ
球団史上初のセ・リーグ3連覇が目前に迫っている
広島。前回のこのコラムでは打線について触れたので、今回は投手陣について、ちょっと斜めから考察をしてみたい。
今回注目したいのは「先発の谷間」である。「先発の谷間」とは、常に先発ローテーションで回っている以外の投手が先発する試合で、まあ普通に考えれば、他のゲームより勝率が著しく落ちる、チームにとっては厳しい試合、ということになるだろう。
今季のカープの場合、基本的には
大瀬良大地、ジョンソン、
野村祐輔、
岡田明丈、
九里亜蓮が先発ローテーションで回っているので、これ以外の投手が先発する日、ということになるだろうか。ペナントレースは基本的に1週間に6試合なので、1週間に1試合は「谷間」が回ってくることになる。
で、注目したいのが、オールスター明け以降のカープの「谷間」の日の勝率だ。4勝3敗。チームの年間勝率には及ばないが、勝ち越しというのは「谷間」にしては好成績ではないだろうか。そしてその成績には、それなりの戦略が潜んでいるように思える。
まず前段として、チームが無理して谷間をなくそうとせず、戦略的に利用しようとしている、というのは間違いないだろう。カープもシーズン序盤は
中村祐太が好調で、6人目に入り、ローテーションを回していたが、シーズン後半は、「5人を固めて、6人目は入れ替えつついく」のを前提とした起用になったように見える。一見、先発ローテは6人で回したほうがしっかりしているように思えるが、実は最初からそういう戦略を取っていないチームは最近少なくない。先発ローテ投手を6人一軍に置きっぱなしにすると、一軍登録人数とベンチ入り人数の関係から、結局、その日リリーフで使えないローテ投手を1人、2人とベンチに入れざるを得なくなるためだ。だったら6人目は最初からとっかえひっかえを前提にして、投げたらすぐ登録抹消、次の投手を登録するまで、その分、野手をベンチに置いたほうがチームとしては戦いやすい、というわけだ。
そして、カープが後半戦、この「谷間」の日を日曜日に固定しているのも、戦略的であるように見える。基本的に翌日の月曜日にゲームがないので、中継ぎ投手を早めにどんどんつぎ込んでいく計算が立つのだ。実際、8月5日の
DeNA戦(横浜)では無失点の先発・
高橋昂也を3回途中で代えて逆転勝ちにつなげているし、8月19日のDeNA戦(同)でも大量リードがありながら、4回から
今村猛、5回から
アドゥワ誠を投入して逃げ切り、9月2日の
ヤクルト戦(神宮)でも、大量リードの展開で3回途中からアドゥワがロングリリーフし、勝利をつかんでいる。もちろんリリーフが打たれるケースもあるが、早めのリリーフ投入が勝利につながったケースは多い。
そういう意味では、後ろの月曜日だけでなく、前の土曜日にも注目だ。カープの後半戦は、土曜日の先発はエースの大瀬良で、先発投手の中で最も長いイニングを投げてくれる可能性の高い投手だ。つまり、リリーフピッチャーが投げるイニングが少なくて済むわけで、そう考えるとつまり、カープのローテーションは最もリリーフ投手がつぎ込みやすい状況で「谷間」を迎えるように組まれているのだ。
まあ、この後は、胴上げが終わればローテーションも変わるだろうし、また、来年ペナントレースで確認しようとしても、金曜日からスタートして回っていく前半戦では状況が変わってくるし、いきなり第3戦が谷間、ということもないだろうので難しいところだが、後半戦は同様の起用が見られるかもしれない。来季、カープなり、他の球団が「ローテの谷間」と「日曜日」の関連をどうしていくかに注目してみるのも、面白いように思う。
文=藤本泰祐 写真=BBM