10月8日に西武が新戦力発掘を目的に入団テストを行った。今回は野球の実技のみならず、反射、反応力など、人の目では見抜きにくい能力を科学的に見つけることができるテスト項目も盛り込まれた。プロ野球界でも稀な内容となった西武入団テストをリポートする。 取材・文=中島大輔 写真=大泉謙也 
従来にない方法で選手の能力を計測していった[写真はメディシンボール垂直スロー]
26選手が参加 ドラフト候補の姿も
PayPayドームでクライマックスシリーズの熱戦の火蓋が切り落とされる約6時間30分前、10月8日朝7時半。西武の本拠地・ベルーナドームと室内練習場では来季以降を見据えて球団初の取り組みが始められた。計26人が参加しての入団テストだ。
「目的は一芸に秀でた選手の発掘です。特にプロに入ってから鍛えるのが難しい能力を見抜けないかと思って企画しました」
そう話したのは、球団本部企画室の市川徹室長だ。2019年、
渡辺久信GM体制となって誕生したこの部署は前年まで「IT戦略室」としてトラックマンの導入やデータ活用&分析を担ってきたが、文字どおり、もっとさまざまな発案を行ってチームを活性化させていく役割を担うようになった。例えば帝京大学と提携しての選手の栄養管理や、今年からバイオメカニクスの担当者を配置したことだ。後者は運動力学の見地からデータを活用してパフォーマンスアップにつなげるアプローチで、昨季まで投手としてプレーして現在は球団スタッフに転身した
榎田大樹氏らが担っている。
入団テストの実施も企画室の発案で、現場の首脳陣も「面白そうだ」と好意的に受け止めた。
18〜24歳の92人が応募し、書類と動画審査を通過した26選手が入団テストに参加。内訳は独立リーグが19人(アメリカのチームから参加した3人を含む)、高校生が3人、社会人が2人、無所属が2人。大学野球部在籍者は退部届の提出が必要になり、秋季リーグの最中では難しかったと考えられる一方、最速152キロを誇る
渡辺明貴(茨城アストロプラネッツ)や俊足外野手の
日隈モンテル(徳島インディゴソックス)ら「ドラフト候補」と言われる選手の姿もあった。
野球に直結するフィジカルチェック
「論文と映像を幅広く、いろんな人の目から見た中で皆さんを選ばせていただきました。今までプロ野球でやってきた入団テストとはちょっと違う形になっています」
秋元宏作ファーム・育成グループディレクターが参加選手にそう説明したように、西武ならではの色が見えたのはその内容だった。従来の入団テストでは50メートル走や遠投などが行われてきたが、必ずしも野球の能力に結びつくとは限らない。例えばプレー中に50メートルを直線で走ることはなく、野球選手に求められるスピードはもっと瞬発的な力だ。そうした観点を踏まえ、西武の入団テストでは(1)視神経の反応、(2)フィジカルチェックを目的に、午前中に9項目の計測が行われた。
(1)視神経反応テスト
・GO NO GO課題
・フランカー課題
(2)フィジカルのチェック
・インボディ
・プロアジリティ(10メートルスプリント)
・20メートルスプリント
・メディシンボール水平スロー
・メディシンボール垂直スロー
・フォースプレート
・ワットバイク
最初にフィジカル系の(2)から説明したい。インボディは体の成分を測定する器具で・・・
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