昨年に続き西武が入団テストを行った。野球の実技だけでなく、反射・反応力など、人の目では見抜きにくい能力を科学的に発見できるテスト項目を盛り込んだ内容が特徴だが、昨年から“進化”はあったのか。球界でも先進的な入団テストをリポートする。 取材・文=中島大輔 写真=川口洋邦 室内練習場、CAR3219フィールドでテストは行われた
数値を見れば伝わる魅力
身長165cmの高校生野手から同193cmのベネズエラ人まで――。
9月2日、埼玉西武ライオンズがファームの本拠地CAR3219フィールドと室内練習場で行った入団テストには多彩な顔ぶれが集まった。
「受けに来た選手の層も幅も昨年より広がりました。どこにどんな才能を持った選手がいるのか分からないので、できるだけ幅広く見たい」
そう話したのは、
秋元宏作ファーム・育成グループディレクターだ。
プロ野球の入団テストはこれまで50メートル走や遠投で絞り込み、実戦形式で見極める形が主流だったが、西武は昨年から「一芸に秀でた者を見いだそう」と独自の選考を始めた。視神経やパワー、スピードなどを計測し“ダイヤの原石”を発掘しようという試みだ。
昨年はクライマックスシリーズのファーストステージ初戦と同じ10月8日に開催し、書類と動画の1次審査を通過した26選手(18〜24歳)が受験した。前年は3人だった高校生の参加者を増やそうと今年は9月2日に早め、同じ応募条件の中で前年より8人多い100人が書類を提出し、35人が二次審査に進んだ。
そのうち最多勢力は独立リーグで、なかでもBCリーグの茨城アストロプラネッツは応募条件の24歳以下の全員が書類を送り、捕手の石垣杜心など7人が参加した。視察に訪れた色川冬馬GMはNPB入りを目指す上で貴重な機会になったと語る。
「当然野球のプレーが大事ですが、フィジカル面から『将来性がある』と判断を受ける可能性もあります。自己アピールのために自分の価値を言語化するのは大切なので、そういう意味でもありがたい機会です」
参加者全体の内訳は明かされていないが、秋元ディレクターによるとアメリカの大学など海外のチームに所属する数人が参加。高校生では大型遊撃手の
田上優弥(日大藤沢高)、193cmの右腕投手・辻口輝(日本ウェルネス高)、長打力も誇る捕手の富山紘之進(会津北嶺高)、そして冒頭で紹介した身長165cmの梶山暖(武田高)もアピールした。
参加者の中でひときわ小さい梶山は強肩と俊敏性を持ち合わせ、
田中幹也(
中日)のようなタイプだ。東
広島市にある武田高は文武両道を掲げて平日50分の練習時間に限られるなか、トレーニングに特化することで昨年のドラフトで
ソフトバンクに育成4位で指名された右腕投手・
内野海斗を伸ばしたが、梶山は武田高の象徴のような選手だと岡嵜雄介監督は言う。
「ウチからテストで拾い上げてもらえるとしたら、梶山しかいないだろうと。背は小さいけどフィジカルの測定ではいい数値を出しています」
西武が新たな基準で入団テストを始めたと知った昨年時点から、岡嵜監督は梶山に受験を勧めてきた。通常のスカウト基準では低身長が敬遠されがちだが、数値を見てもらえれば魅力が伝わると思ったからだ。
指揮官に背中を押され、梶山が受験を決めたのは6月。このころからパワーも含めて打力が上がり・・・
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