左から高岡、冨原、中司、小土井。今春の県大会は1回戦で呉高に2対3で惜敗した。勝負の夏は投手力で広島の頂点を狙う[写真=守田直樹]
いまや強豪私学に140キロ超のピッチャーが複数いるのは珍しくない。しかし甲子園出場経験のない公立高校となると話は別だろう。
広島県福山市の郊外にある県立の神辺旭高は今年、“140キロ超カルテット”を実現させた。全員が中学時代はほぼ実績のない選手だった。
なかでもプロ11球団のスカウトが視察に訪れたというMAX149キロ右腕が冨原朔。4人のなかで唯一、中学時代にシニアでプレーした硬式経験者だが、二塁など内野手専門で投手経験はゼロだった。同校を率いて6年目の高橋良輔監督は言う。
「夏には140キロ台が6人になると思います。そうなれば、全国でも公立高校のなかではトップクラスではないでしょうか。120キロ台で入学すれば、140キロはほぼ出るようになる。伸びない子は食事面など、何かの原因がありますね」
広島県内で唯一の体育科と硬式野球部のある県立高校だが、他部と共用のグラウンドで、練習環境に恵まれているとは言えない。マウンドの前を陸上部員が走ったりするため、取材日はバックネット周辺でティー打撃やトレーニングに終始した。
「昨年から陸上部とサッカー部が休みにしてくれた木曜日だけ、全体を使ってシートノックなどの練習ができるようになりました。といっても、ライトは75メートルですが」
平日練習は、午後4時過ぎから6時半まで。技術練習とトレーニングがほぼ半々になる。4投手に球速アップの秘密を聞くと「ウエート・トレーニング」と口をそろえる。筋力アップと瞬発系をバランス良く鍛えつつ、専門トレーナーを2カ月に一度程度招き、投球モーションの解析や修正などに力を注いでいる。
「もともと僕が投手出身で、トレーニングや栄養学が好きだったんです。投球モーションのメカニクスを理解した上でトレーニングを積むことが重要です。冨原が最初に140キロを出したときも、理論的に体の動きが順番でこうなり、ここが入って次はここみたいなところがつながった、と野球日誌に書いていました」
プロ選手のモノマネが得意
記者が最初に冨原を見たのは1年生の秋。広島大会準々決勝で呉高を延長10回、7対6で破った劇的なゲームだった。
背番号1で先発した冨原は当時・・・
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