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山崎夏生のルール教室

勝手な判断が手痛い失敗に ボール交換のつもりが進塁!?/元パ・リーグ審判員 山崎夏生に聞く

 

ボール交換の権利は投手と審判のみが有している。ほか選手個人の判断による交換は手痛い失敗につながることになる


【問】先日、雨中の草野球でこんなプレーがありました。無走者で投手は四球を与えたのですが、それを捕手がはじきました。どうせボールを交換するのだからと、捕手はタイムをかけずにそのボールをベンチ内に投げ入れてしまったのです。このとき、打者は一塁に未到達でしたが、この場合の進塁はどうなるのかでもめました。[1]四球になった時点でボールデッドだから打者走者は一塁 [2]四球の安全進塁権1個と投球がベンチ内に入った進塁権1個で打者走者は二塁 [3]投球ではなく、捕手の悪送球の進塁権は2個なので四球と合わせて打者走者は三塁。どれが正解でしょうか?

【答】困った捕手ですね。まずボールを交換できる権利を有するのは投手と審判のみです。勝手に交換するなど言語道断、もしも野手や打者からの要求があれば必ずや審判はタイムをかけてからボールを受け取り、傷や汚れの有無を確認してから交換します。プロ野球ではこんなシーンが頻繁に見られるはずです。

 さて、まずは[1]ですが、死球はボールデッドですが四球はインプレーです。よって不正解。次に[2]ですが、結果的には合っています。でも四球に加え投球がベンチ内に入ったから1+1=2なのではありません。そのケースならば進塁は四球による1個だけです。ここで重要なのは捕手がはじいた時点ではまだ投球とみなされていますが、それをベンチに投げ入れればもはや野手の悪送球とみなされていること。四球の投球がはじかれてベンチ内に入ったのではありません。打者走者が二塁まで行けるのは、それが野手の悪送球とみなされるからです。この場合の進塁の起点は送球がなされた時点ですから、一塁に達していなかったので二塁。もしも一塁到達後でしたら三塁まで行けます。よって[3]は一塁に達していたならば正解になります(以上、規則5.06.b.4.G.H参照)。

 これと似たケースで気を付けたいのは投手のけん制球での悪送球です。もしも軸足が投手板に触れていれば投手の悪送球ですから、ボールデッドゾーンに入ったならば進塁は一個のみ。しかし投手板から外せば野手の悪送球とみなされるので、進塁は二個となります。また軸足を外すとは必ずや投手板の後方に置くことであり、投手板上での移行は外したとは認められません。ですから一塁審判のみならず、全審判が注意深く投手の軸足の位置を見ていますよ。

PROFILE
やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社.東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。
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元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

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