1年目から定位置をつかむなどキャリアは順調だった。しかし、完璧主義であるが故に満足することはなかった。近年はケガにも苦しみ、理想とは程遠い成績が続く。心の奥にはもどかしさも残るが、もう下は向かない。今と向き合い、向上心をたぎらせている。 文=田口元義(フリーライター) 写真=桜井ひとし、兼村竜介、BBM 血をたぎらせるもの
茂木栄五郎は大きく息を吸い、
「いやぁ」と言葉を吐いた。
「早いですねぇ。『もう30か』って。自分がプロになってから想像してこなかった年齢ですからね」 楽天に入団して9年目の今年。茂木は2月で30歳になった。
見た目はルーキーのときとさほど変わらないように映るが、プレーヤーとしての年輪は違う。鮮やかな曲線を描いているかと思えば、邪魔するように急に湾曲する。そのゆがみに抗い、真円を描こうとする。
そうして、茂木の年輪は味を出す。
メインとするポジションは、学生時代から慣れ親しむ三塁ではなく、プロで研さんを積んできた遊撃でも、オプションとして鍛錬する二塁でもなく、一塁である。
「一応、どこでもできるように準備はしています」 そうは言うものの、繊細な生き物であるアスリートは、変化が成績に直結してしまうことが少なくない。主力として14試合に出場したオープン戦では、打率.189と振るわなかった。不慣れなポジションと決して無関係ではないはずだ。
それでも茂木は、前を向く。
「オープン戦とかでは結構、苦しんだんですけど、今年はチャンスをもらえているので。しっかり結果を出せるように、開幕から頑張っていきたいなとは思っています」 茂木は今、30歳にして原点を取り戻そうとしている。
負けたくない。
学生時代から強く抱く向上心を、体現しようとしているのである。
桐蔭学園高時代は・・・
この続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。
まずは体験!登録後7日間無料
登録すると、2万本以上のすべての特集・インタビュー・コラムが読み放題となります。
登録済みの方はこちらからログイン