クレバーなバッティング
シュアな打撃で日本球界に適応しつつあるノイジー
首位快走の
阪神を支える助っ人がいる。今年から加入したシェルドン・ノイジーだ。
本塁打を量産するわけではなく、決して派手なプレーヤーではない。だが、攻守で貢献度は非常に高い。広角に打ち分けるシュアな打撃スタイルが持ち味で、4月30日の
ヤクルト戦(神宮)から12試合連続出塁。開幕当初はボール球の変化球に空振りする場面が目立ち、打率が2割5分を切った5月10日のヤクルト戦(甲子園)では初めてスタメンを外れたが、
岡田彰布監督の助言を受けてきっちりボール球を見極めて四球を選べるようになったことで、打撃の内容が変化していく。
13日の
DeNA戦(甲子園)でマルチ安打、来日初となる3打点の活躍でお立ち台へ。家族がスタンドで見守る中、「こんなに多くのファンにサポートされてプレーできるのが幸せです。雨の中で最後まで応援してくれる阪神ファンは最高のファンだと思います」と感謝の言葉を口にして大歓声を浴びた。同戦からの4試合で計11安打と打棒爆発。19日の
広島戦(甲子園)は敗れたが3回に左越えソロを放つなどマルチ安打2打点と奮闘し、打率.287、3本塁打、15打点は合格点をつけられる。
他球団のスコアラーは、「状況に応じてコンパクトな打撃をしたり、クレバーですよね。日本で成功した
マット・マートンに雰囲気が似ています。長打力もあるし、日本野球に順応してきているので大ブレークする可能性は十分にある。四番・
大山悠輔、五番・
佐藤輝明の前に走者を出したくないので、ノイジーをいかに抑えるかがポイントになると思います」と警戒を強める。
岡田監督も高い期待
阪神は助っ人野手が期待外れに終わるケースが近年多かったが、今年から就任した岡田監督はノイジーに期待を寄せていた。昨年12月に週刊ベースボールのコラムで、「彼の特徴は広角に打てるということ。ホームランではなく、高い打率を残す巧打者タイプ。だからオレは『つなぎ』のバッティングを期待するのよ。イメージとしては05年、優勝に貢献したシーツです。そういった打撃で四番、五番につないでくれたら……ということで現状三番を頭に描いている」と評価していた。
さらに「甲子園でバンバン本塁打を放つような外国人選手は余程のことがない限り、獲得できない。そういった触れ込みで来た外国人はここ数年、ことごとく期待を裏切っているし、甲子園で成功した
オマリー、マートンはヒットを量産できる選手やった。こういうタイプのほうが甲子園に向く。そういう意味でもノイジーには期待していいんじゃないかな」と活躍を予感していた。
守備でも勝利に貢献
阪神で6年間プレーして通算1020安打をマークしたマートン
魅力は打撃だけではない。走塁では常に一つ先の塁を狙い、左翼の守備でもリーグトップとなる直接送球で4補殺をマーク。18日の
中日戦(バンテリン)では3点リードの8回二死一、二塁で、
村松開人がはじき返した左翼線の打球を素早く処理して三塁に送球し、一塁走者の
細川成也を刺した。二塁走者・石川昂の本塁生還より三塁でのタッチアウトが先に成立していたため、得点を阻止。もし、細川の三塁進塁を許していたら、2点差に迫られて二死二、三塁と一打同点のピンチを迎えていただけに、ノイジーの好守は試合を決めるビッグプレーと言ってよいだろう。三塁ベンチでナインからハイタッチで迎えられ、指揮官も目を細めていた。
メジャーで目立った実績がなかったマートンは28歳で来日し、阪神在籍5年間で最多安打を3度、首位打者を1度獲得するなど球界を代表する中距離打者として活躍した。ノイジーも28歳で阪神に入団している。野球に向き合う真摯な姿勢で、ジャパニーズドリームをつかめるか。
写真=BBM