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【大学野球】立大が不祥事により3年生以下で明大戦 「感謝」を胸にプレーするのみ

 

「最上級生としての責任を感じている」


立大は明大1回戦を2対7で落とした。木村コーチ[左端]が監督代行、3年生・田中[左から3人目]がゲームキャプテンを務めた


 東京六大学リーグ戦が行われた9月30日、第1試合開始の1時間前の午前9時、神宮球場内の会議室で記者会見が行われた。

 立大の一部報道を受けての記者会見だった。

 2つ不祥事案のうち1つは今年6月、大学から東京六大学野球連盟へ報告があった。同連盟の上部団体である全日本大学野球連盟に上申され、審議委員会で審査した結果、処分には該当しないと判断された。つまり、教育的指導となり、同事案が公になることはなかったのである。仮に処分対象となっていれば、全日本大学野球連盟の上部団体である日本学生野球協会の第三者機関である「審査室会議」において、具体的な処分が決まる流れだった。

 もう1つの不祥事案は、大学側が事件性はないと判断し、東京六大学野球連盟へ報告することはなかったという。ところが、今回の一部報道による大学側への取材依頼により「大学として把握していないことがあり、大学として再調査が必要であると判断した」(立大・長野香広報課長)と、外部の弁護士を含めた「調査委員会」の設置を発表した。

 野球部としては「部長、監督(溝口智成氏)のこれまでの対応が不十分である可能性があり、重く受け止めている。調査、事実関係が明らかになり、しかるべき判断がなされるまでの間、公式戦の出場を自粛する。その間、木村泰雄コーチが監督代行を務める」(金子明雄野球部長)と発表した。さらには「4年生がこのような状況に至ったことに責任を感じており、大学とも協議を重ねましたが、神宮での活動を自粛するという判断にいたしました。リーグ戦の実施にあたりまして、異例の対応になることを、あらためてお詫びを申し上げます」と、金子部長は頭を下げた。

立大は明大1回戦前、神宮球場内で記者会見を開いた。左は金子野球部長、右は長野広報課長


 部員へのヒアリング、不祥事案のあった場所、加害者、被害者については明言せず、金子部長は「現在、調査中」とだけ語った。ただし「自粛」については、こう補足している。

「処分、処罰ではない。最上級生としての責任を感じている。部としての姿勢を示す」

 この日は明大1回戦が組まれ、立大は3年生以下で戦った。日本高等学校野球連盟の上部団体でもある日本学生野球協会によれば昨今、高校野球を含めても、集団の不祥事でない限り、チームとしての試合出場を差し止めるケース(処分)はないという。金子部長によれば、神宮の活動自粛は対明大戦における対応であり「来週以降は、状況によって判断する」とした。長野広報課長は「迅速かつ、厳正、公正に調査を行ってまいります」と語った。

「それぞれが力を発揮した」


 試合は立大が2対7の逆転負けで、開幕5連敗となった。木村監督代行は「難しい状況の中でしたが、グラウンドに出たら1球に集中して、普段の力を出してくれ、と試合前は言いました。主将も不在でしたが、(ゲームキャプテンの)田中(祥都、3年・仙台育英高)がチームをまとめ、学生コーチも含めてカバーしてくれた。結果は2対7でしたが、それぞれが力を発揮した」と振り返った。急きょ、ゲームキャプテンを任された田中は「多くの方々に見に来ていただき、感謝しかありません。僕たちの行動が、多くの人に迷惑をかけた事実がある。自分たちは、取り組んできたことを全力で出し切るだけ。今できることを全力でやるしかない。目の前の一戦、一丸となって戦っている姿を見せたい」と語った。

 立大は明大の6安打を上回る13安打を放ちながら、打線のつながりに欠けた。投手陣も、ここ一番で踏ん張り切れなかった。苦しい戦いは続く。だが、神宮でリーグ戦という舞台が用意されている限り、勝利を目指して戦うのみ。審判員4人、公式記録員がジャッジし、相手チームがあって、はじめて成立する野球である。この日も、一塁応援席では立教大学体育会応援団のリーダー部、吹奏楽部、チアリーディング部による全力応援が展開された。ネット裏、内野席でも立大を後押しする拍手が何度も沸き起こった。3年生・田中が言うように「感謝」を胸にプレーするだけだ。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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