今季は不本意な成績に
今季限りで楽天から戦力外通告を受けた西川。新天地はどこになるか
今オフはFA市場でなく、来季の構想から外れて退団した選手もビッグネームが多い。
巨人でプレーして通算1928安打を記録した
中島宏之、黄金時代の
ソフトバンクで守護神を務めて通算127セーブ、105ホールドをマークした
森唯斗、球界屈指の守備型捕手として今季は楽天で65試合出場した
炭谷銀仁朗……。そして、この男も野球人生の岐路を迎えている。楽天を退団した
西川遥輝だ。
パ・リーグを代表するリードオフマンとして、
日本ハムで活躍していた姿はそう遠くない。3年前の2020年に打率.306、5本塁打、39打点、42盗塁をマーク。92四球はリーグ最多で出塁率.430は自身のキャリアハイだった。翌21年は打率.233と打撃不振だったが、24盗塁で4度目の盗塁王を獲得。チームの若返りの方針もあり同年限りで退団したが、楽天でかけられた期待は大きかった。
ところが、輝きを取り戻せない。移籍1年目の昨年は春先に好調だったが、5月以降は快音が止まった。108試合出場で打率.218、7本塁打、37打点、19盗塁と不本意な成績に。即戦力で加入しただけに、結果を出せなければ置かれた立場は苦しくなる。今季は35試合と出場機会が激減し、打率.181、1本塁打、4打点、2盗塁に終わった。
「打撃のズレがなかなか修正できず、結果を出さなければいけないという焦りがあったのでは。個人的にはセ・リーグのほうが輝けるのでは、と。変化球をさばくのがうまいし、狭い球場が多いので外野の守備の負担が少ない。31歳という年齢を考えるとこのまま消えてしまうのは惜しい」(スポーツ紙デスク)
「必要とされるところでやりたい」
環境を変えることで、もう一花咲かせられるか。良きお手本となるのが、西川と同じリードオフマンで現役時代に活躍し、近鉄、オリックス、ヤクルトで通算1526安打をマークした
坂口智隆だ。オリックスで08年から4年連続150安打以上マークし、11年に最多安打(175安打)のタイトルを獲得。安打を量産するだけでなく、中距離打者として右中間や左中間を射抜く打球が多く、10、11年には2年連続でリーグ最多の三塁打を放った。外野の守備能力も高く、ゴールデン・グラブ賞を4度獲得している。
レギュラーとして活躍してきたが、12年以降や故障や若手の台頭で出場機会が減少。オリックス退団を決断したのは15年オフだった。
坂口は週刊ベースボールのインタビューで、こう振り返っている。
「自分がまいた種で、成績を残していたらあんなことにならなかった。(退団の)決断は早かったです。チームメートは好きでしたし、神戸は地元だし、ファンにも熱心に応援していただいて寂しさはあったけど、このまま尻すぼみで終わりたくなかった。必要とされるところでやりたいという思いが強くなり、オリックスを出るという決断をしました。もし、獲得する球団がなかったら、その立ち位置の選手だったと腹をくくっていました」
新天地で見事に復活
手を差し伸べてくれたヤクルトに加入すると、見事に復活した、移籍1年目の16年から外野のレギュラーをつかみ、3年連続150安打以上をマーク。18年は
青木宣親がメジャーから復帰したことに伴い、野球人生初の一塁にコンバートされている。不慣れな守備位置でも自身の成長の糧にした。打率.317、3本塁打、37打点、9盗塁をマーク。出塁率.406と自己最高の数値だった。
坂口はヤクルトで7年間プレーし、昨季限りで現役引退。ケガをしても試合に出続ける不屈の闘志と執念はチームに新たな風を吹き込み、ファンに絶大な人気を誇った。
「ヤクルトに救ってもらって、絶対に恩返しするという思いだけでした。野球はチームプレーのスポーツだから順位は一人でどうこうできないけど、試合に活躍してチームに貢献することで、坂口を獲ってよかったなと思わせられる。とにかく必死でした。ファーストに挑戦したシーズンは自分の野球人生を振り返ったとき、すごく大事な年でした。もしファーストをやっていなかったら、もっと早く現役引退していたと思います」
西川もゼロからのスタートを切る新天地でよみがえるか。険しい道だが、準備を尽くして獲得のオファーを待つ。
写真=BBM