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【大学野球】早大が天皇杯奪還の勝因は何か チームの誰もが挙げる川内脩平学生コーチの名前

 

同級生からの推薦で学生コーチに


早大・川内学生コーチ[中央]は明るいキャラクターで、コミュニケーション能力が抜群である。左は控え捕手の栗田、右は主将の正捕手・印出[写真=矢野寿明]


【6月2日】東京六大学(神宮)
早大12-2慶大(早大2勝)

 早大が2020年秋以来、リーグ最多47度目の東京六大学リーグ戦制覇を遂げた。

 7季ぶりとなる天皇杯奪還の勝因は何か。

 チームの誰もがまず、川内脩平学生コーチ(4年・八王子高)の名前を挙げる。背番号50。プレーヤーを支える裏方に徹し、献身的に動き、主将で捕手の印出太一(4年・中京大中京高)との強力タッグが機能した。

「めっちゃ、うれしいです!!」

 苦労が報われた瞬間である。

 八王子高から1年の浪人生活を経て、早大スポーツ科学部に入学した。小学校3年時に早慶戦を観戦し、エンジの早稲田のユニフォームにあこがれた。現役では6つの学部を受験も不合格。1日10時間の猛勉強を重ね、2度目の挑戦で、合格を手にすることができた。

「6学部で1つだけ。もう、十分です(笑)」

 早稲田大学野球部に捕手として入部すると、カルチャーショックを受けた。

「同学年にスポーツ推薦で入学した印出と栗田勇雅(4年・山梨学院高)がいまして……。パワー、スピードが違う。正直、これは、レギュラーは難しいと思いました(苦笑)」

 早大は2年秋のリーグ戦が終わるまでに、学生コーチを1人、選出しなければならない。学年ミーティングを重ね、同級生からの推薦を受けた。「印出から『一緒にチームを作っていこう』と言われ、決心がついた」。3年時は先輩を見ながらコーチングを学び、昨年11月の新チームから本格始動。練習メニューを決め、一、二軍の選手の入れ替えについて、小宮山悟監督に進言する立場にもある。

ターニングポイントは沖縄キャンプ


「一球入魂」。早大の初代監督・飛田穂洲氏の教えを徹底させてきた。神宮で成果を収めるには、練習あるのみ。ターニングポイントは、3月の沖縄キャンプだったという。

「連続17日間、オフなしてメニューを消化してきました。やり切る力がついたと思います。約2カ月のリーグ戦はタフな5カードとなりますが、体力的な部分で問題となったことはありませんでした」。勝ち点5の完全優勝の背景には、心身両面のタフさが根底に。12試合でチーム打率.304、4失策、チーム防御率1.57と盤石の戦いを展開できたのも、川内学生コーチの下での万全な準備があった。

「主将・印出、副将・吉納(吉納翼、4年・東邦高)をはじめ、自分で考えて動ける選手が多いんです。昨年までは3年生以下が遠慮している部分もありましたが、学年の垣根もなくなり、風通しの良いムードに。下級生がプレーしやすい環境がゲームでも生かされたと思います。印出が思い描くチームになった」

 神田航副務(4年・早大学院)は、川内学生コーチのチームへの貢献度を語る。

「印出と川内は細部まで、いろいろなところが見えている。気づきがある。チーム運営上、ありがたい存在です」

 お互い捕手同士であり、相手の心を読み、人間観察が得意。円滑にチームが回った。神宮で結果を残すチームには必ず、頼もしい裏方がいる。今春、あらためて早大が証明した。

文=岡本朋祐
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