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【大学野球】打率.479で首位打者獲得の早大・尾瀬雄大 「第1打席の1球目に100パーセントのスイング」が身上

 

小宮山監督が挙げた「MVP」


首位打者のブロンズ像を手に笑顔を見せる[写真=矢野寿明]


【6月2日】東京六大学(神宮)
早大12-2慶大(早大2勝)

 早大が2020年秋以来、リーグ最多47度目の東京六大学リーグ戦制覇を遂げた。

 19年1月から母校を指揮する早大・小宮山悟監督が「MVP」に挙げたのは、打率.479で初の首位打者を獲得した不動の一番・尾瀬雄大(3年・帝京高)である。

 なぜ、元プロの指揮官は絶賛したのか。

 トップバッターとしての役割、仕事ぶりにある。12試合中、8試合で初回の第1打席で安打。小宮山監督が「なかなかできないこと」と称賛すると、尾瀬は「褒めてもらえないので、うれしいです」と笑顔を見せた。

「一番打者として、初回の出塁を意識してきました。第1打席の1球目に100パーセントのスイング。自分のスイングが迷いなくできている。低い打球を、センターから逆方向を狙っている。8試合で第1打席に安打が出たのは、こちらに良い流れを持ってこられた。良いチームのムードにつながったと思います」

 早慶戦を前にして打率.474でトップに立っていた。通常ならば、数字を気にしてしまうところだが、尾瀬は現実と真正面から向き合っていた。慶大1回戦前に話を聞いた。

「嫌でも、意識はします(苦笑)。打撃成績? 見ます。勝てば、何でも良い。1打席の積み重ねでやってきたので、それは変わらず。勝てば首位打者もついてくると思います」

 重圧とは無縁だった。1回戦は1安打。王手をかけた2回戦は6打数4安打3打点の大当たり。第2打席で今季21本目のヒットが今季初の長打(二塁打)となると、第3打席では右越えのリーグ戦通算2号を放った。打率.479で初のタイトルを奪取した。

「長打はたまたまです。ホームランは気持ち良かったです。首位打者はずっと、目標にしてきたのでうれしいです」

青木宣親の姿が重なる打撃


慶大2回戦は6打数4安打の大当たり。第3打席ではリーグ戦通算2号を右越えに放った[写真=矢野寿明]


 なぜ、安打を量産できるのか。金森栄治助監督は元プロの視点で、尾瀬の打撃を語る。

「アウトの内容も、良いんです。自分のスイングで終われているから、次の打席につながる。スイングが安定しているから好投手に対応でき、チャンスでも打てる」

 本人はこう分析する。

「下半身がブレないようにしています。ほどけてしまったら終わり……。下半身で打つ意識。上半身は勝手についてくるイメージ。金森さんの指導と、自分がやろうとしていることは合致している。無駄をなくし、シンプルに来たボールに対して振っています」

 神宮で背番号24が安打量産する姿に、早大OBのヤクルト青木宣親を思い出した。

「目標としている選手です。広角に安打を打てるのが、自分の持ち味。体が小さくても、やれるところを見せていきたいです」

 172センチ80キロ。鍛え上げた体は、登録よりも大きく見える。チーム屈指の練習の虫は、まさしくお手本である。尾瀬は来年のプロ入りを目指しており、東京六大学のタイトルホルダーとして、さらに評価を高めたはずだ。

 優勝を決めた閉会式後は指導者、4年生、スタッフらが続々と神宮の杜を舞った。尾瀬は「首位打者! 首位打者!」と自らコール。チーム内の愛されキャラである。4年生はあえて指名をせず、ずっこける尾瀬。複数回のアピールを経て、ようやく3年生の順番となり、最上級生らの手によって、気持ちよく胴上げされた。

 早大は6月10日に開幕する全日本大学選手権に出場する。真価が問われる全国舞台。集中力を研ぎ澄ます、尾瀬の第1打席に注目だ。

文=岡本朋祐
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