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首都大学リポート

【首都大学リポート】病と闘いながら野球に取り組む武蔵大・松本京太郎 入れ替え戦でも見せた好打

 

安定性を高めた打撃


武蔵大・松本は二部リーグでの勝負強い打撃を、入れ替え戦でも披露している


【6月2日】首都大学一部二部入れ替え戦
武蔵大5-1城西大(1勝1敗)

 首都大学リーグ・入れ替え戦2回戦。城西大の先勝で迎えた2回戦は、武蔵大(二部1位)が5対1で城西大(一部6位)を退け、対戦成績は1勝1敗のタイに。チームに勝利を呼び込んだのは病と闘いながら野球に取り組む三番・松本京太郎(4年・仙台育英高)のバットだった。

 松本が1型糖尿病を発症したのは小学3年生の冬。9歳だったが、以降は食事後や就寝前に1日4〜5回のインスリン注射は欠かすことができず「分量を間違えてしまうと低血糖になってしまうので、体調面を管理するのは大変です」と明かす。それでも「きちんと治療を続けていればスポーツもできますから」と病気が発覚後も野球を継続している。

 その期間は10年以上にわたるが「家族や周囲の方々の支えや応援が自分の原動力になっています。そして、自分が野球をすることで、同じ病気の方の背中を押すことができれば」と話す。

 仙台育英高では、3年春のセンバツ出場を決めた。だが、コロナ禍により大会は中止。

「甲子園に出場するために野球をやっていましたし、幼い頃からの夢だったのでセンバツがなくなった時は本当に悲しかったです」

 センバツ出場校が招待された8月の甲子園交流試合では倉敷商高と対戦。右翼の守備から途中出場したが、1打席で無安打に終わった。

「この試合が、高校で最後の試合だったので、結果はともかく楽しくやろうと思っていました。甲子園のグラウンドに立てたことは良い経験になりましたが、やっぱりトーナメントでどこまで勝ち上がれるのかやってみたかったです」

 大学でも野球を続けたいと考えていた松本は「当時、首都大学リーグの一部に所属していて野球のレベルが高く、自分の学力にも合っていました」という武蔵大に進学。1年秋にリーグ戦にデビューすると、2年秋は規定打席にわずかに届かなかったものの打率.375をマーク。

 3年春にはレギュラーとなり2本塁打を記録した。この冬は「ティーバッティングを繰り返して、軸がぶれないように自分のフォームを確認し、丁寧に反復練習をしてきました」とバッティングの安定性を高めた。

二部リーグでベストナイン受賞


「自分は感情移入しやすいタイプですぐに一喜一憂してしまうのですが、良い時も悪い時もすぐに切り替えて感情を常に一定に保つように心掛けてきました」とメンタル面の波もなくしてきた。最上級生として迎えた今春のリーグ戦では、開幕から5試合連続で安打と打点を記録。第2週の足利大戦と第5週の大東文化大戦では本塁打。第3週の成城大戦では二塁打2本、三塁打1本を放ち3安打5打点の大活躍を見せるなど、二部リーグで5位の打率.394。9試合で14打点で、ベストナインを受賞した。

「高校時代はホームランが2本だけだったのですが、大学ではもう9本。パワーも技術も武蔵大で伸ばしてもらったおかげで、ベストナインが取れたのだと思います」

 城西大との入れ替え戦2回戦では、4回表二死二、三塁から「追い込まれていたので、どんな球にも食らいついていこうと考えていました」とセンターの右へ先制の2点適時二塁打。二塁ベース上では大きなガッツポーズを見せた。

 続く第4打席でもヒットを放った。さらに四番・岩田侑真(3年・日大二高)が2本のタイムリーを放ち、7回表には九番・樋口結希斗(4年・浦和学院高)が本塁打。先発の松崎公亮(4年・聖徳学園高)は9回に1点を失ったものの完投し、投打ががっちりとかみ合って武蔵大は城西大に快勝した。

 一部昇格に向け「気負うことなく、これまでやってきたことを信じて楽しみたい」と意気込みを語った松本。勝ったチームがこの秋、一部でプレーする権利を得る大一番が控えるが、今季、徹底してきた平常心で挑む。

文&写真=大平明
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