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プロ15年間で規定打席到達ゼロも…巨人に「不可欠な天才打者」は

 

リハビリを経て復活


ベテランらしいシャープなバッティングが光る立岡


 交流戦で12球団トップの49得点をマークしている巨人。その原動力になっているのが、シーズン途中加入したエリエ・ヘルナンデスと、故障によるリハビリを経て復活したプロ16年目の立岡宗一郎だ。

 試練を乗り越えた男は強い。2022年6月9日の西武戦(ベルーナ)で外野の守備で打球を追った際に丸佳浩と交錯し、左膝前十字じん帯を損傷。再建手術を受けて長いリハビリ生活に打ち込んだ。同年オフに育成契約に。昨年7月の三軍戦で実戦復帰を果たすと、秋季キャンプでは若手中心のメンバーにもかかわらず抜擢された。

 今年の開幕は二軍スタートだったが、5月21日に支配下に復帰し、一軍昇格。同月は9試合出場で打率.105と結果を残せなかったが、6月に打棒が爆発する。「九番・中堅」でスタメン出場した2日の西武戦(ベルーナ)で5回二死二塁の好機を迎えると、ボー・タカハシの直球を左前に運ぶ先制適時打。3点リードの7回にも左前打を放ってその後に三塁へ進むと、佐藤隼輔の暴投で迷わずヘッドスライディングで本塁に突入し、追加点をもぎ取った。9回にも左前打を放ち、7年ぶりの猛打賞をマーク。守備でも8回二死一、二塁に元山飛優の中堅に落ちようかという打球を好捕。走攻守で輝きを放った。

 さらに、「六番・中堅」でスタメン出場した4日のロッテ戦(東京ドーム)では4安打4打点の大暴れ。初回一死一、三塁でフルカウントから小島和哉の直球を中前にはじき返す適時打、3回にも無死満塁で中前適時打、さらに一死満塁で2点左前適時打と止まらない。6回も右前打を放ち、2試合連続猛打賞で故障から復帰後初のお立ち台に。「(リハビリ中は)妻が一生懸命サポートしてくれて、球団のトレーナーさんも親身になってくれて……。感謝の思いを伝えたいと思います」と感慨深い表情に。「またここから自分自身、全盛期だと思ってチームの力になれるように頑張ります」と宣言すると、スタンドから大きな拍手が鳴り響いた。

隙のない走塁も大きな武器だ


 打つだけでなく、足も大きな武器だ。6日の同戦では3点リードの4回に三ゴロがアウトと判定されたが、阿部慎之助監督のリクエストでリプレー検証の結果、一塁手・ソトのファーストミットが立岡にタッチできていなかったため、判定が覆ってセーフに。立岡が二盗を決めると、大城卓三の中前適時打で本塁に生還した。

逆境を乗り越えて放つ輝き


 非凡な野球センスは誰もが認める。ドラフト2位で入団したソフトバンクから巨人にトレード移籍したのが12年6月。移籍直後にファームの守備で味方と交錯し、左肘靭帯断裂の大ケガを負い、肘の痛みにより右打席でバットを振れなくなり、9月に左打ちに転向した。

 打撃を土台から作り直し、わずか3年足らずの15年に91試合出場で打率.304、16盗塁をマーク。並外れた練習量を積み重ねたが、頭で描くイメージを体で具現化するセンスは天才的だ。レギュラーをつかみかけたが、慢心はない。立岡は週刊ベースボールのインタビューで以下のように語っていた。

「91試合ですか。たったそれだけ、全然物足りないな、というのが昨年に対する正直な思いです。そう感じる一番の理由は、1年間フルで出場してこそレギュラーだと思いますし、長年、フルに近い試合数に出ている人たちと自分を比べてはダメ。確かにバッティング面では、3割(.304)、3ケタ安打(103安打)が残りましたけど、規定打席にも達していないですから(367打席※規定打席は443)。そもそも、ポジションを圧倒的な力で奪ったわけではないんです。故障者が出て、他の選手たちも本調子ではない中で、タイミングよく自分が使ってもらった、そこでポンポンとヒットが出た、という部分が大きい。今年は、やっぱりみんな目の色を変えてやっていると思いますし、むしろその中で勝ち抜いて試合に出たいという気持ちのほうが強いですね」

 翌年は左わき腹の故障の影響で51試合出場にとどまり、その後も陽岱鋼、丸がFA移籍で加入、度重なる故障も重なり一軍定着できない。規定打席に到達したシーズンが1度もないまま15年の月日が流れたが、逆境を乗り越えて再び輝きを放っている。立岡が下位打線でチャンスメーク、ポイントゲッターの役割をまっとうすることで切れ目のない打線が実現している。チームに不可欠な存在だ。

写真=BBM
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