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中日の救世主になれる? ファームで2冠の「育成右腕」が秘密兵器に

 

ファームで強烈にアピール


ウエスタンで好投を続けている松木平。一軍で投げる姿を見たい投手だ


 交流戦は7勝11敗と波に乗れなかった中日。リーグ戦再開に向け、打線の奮起だけでなく投手陣も立て直しを迫られている。

 今季はチーム防御率2.76だが、先発陣に限定すると防御率3.02でリーグ4位。リーグトップの広島の先発陣防御率2.18と開きがある。柳裕也が6月16日のロッテ戦(ZOZOマリンで5回8安打4失点と試合をつくれず今季4敗目を喫し、ファーム降格に。大野雄大梅津晃大がファームで調整しており、メヒアも9試合登板で3勝4敗、防御率4.50と安定しているとは言えない。

 苦しい台所事情の中、ファームで存在を強烈にアピールしているのが育成右腕の松木平優太だ。プロ4年目の今季はファームで格の違いを見せている。5月30日のオリックス戦(杉本商事BS舞洲)でプロ初完封勝利を挙げると、6月6日のソフトバンク戦(みずほPayPay)で8回2失点の快投。6月13日のウエスタン・広島戦(ナゴヤ)では7回2安打無失点と好投した。最速147キロの直球にスライダー、カーブ、チェンジアップと精度の高い変化球を織り交ぜ、二塁を踏ませたのは5回の1度のみ。抜群の安定感だった。ファームで12試合登板し、7勝3敗、防御率1.85。7勝、56奪三振はリーグトップだ。中日の支配下選手は69人で上限の70人に残り1枠だが、最有力候補だろう。

高橋宏斗と同期入団


 松木平は同期入団の高橋宏斗と仲が良い。常に一緒に行動しているが、その歩みは対照的だ。高橋宏は中京大中京高で高校球界を代表する右腕として名を轟かせ、ドラフト1位で入団したが、松木平は野球では無名校の精華高で、投手に転向したのは高2の夏。週刊ベースボールのインタビューで、「部員が10人くらいしかいなくて(笑)、その中に投手がいなかったので、自分がやりたいと立候補しました。それまでは主に内野をやっていました」と語っている。

 底知れぬ可能性を感じさせたのが、1年後の夏だった。練習試合で名門・履正社高と対戦した際に自己記録を6キロ更新する145キロの直球を投げ込み、前年の甲子園王者を3失点に抑え込んだ。

「大阪の強豪校を相手に投げても、しっかりと抑えることができて少しずつ希望が出てきました。そこからプロのスカウトの方が来られるようになって、だんだんとプロ志望になりました」

目標とするスタイルは柳裕也


 中日に育成ドラフト3位で入団。体力作りからスタートした金の卵は、2年目の春季キャンプで一軍メンバーに抜擢される。バランスの良い投球フォーム、しなやかな腕の振りから力強い球を投げ込む姿が立浪和義監督の目に留まった。

 肉体強化と共に実戦登板を重ねることで、着実に成長している。昨年は16試合登板で5勝4敗、防御率4.56。ウエスタン・リーグ優秀選手賞を受賞し、台湾ウインター・リーグに参加した際は自己最速となる151キロを計測した。

 松木平は複雑な家庭環境で育った。インドネシア人の父親と日本人の母親の間に生まれたが、2歳のときに両親が離婚。インドネシア人の父親との記憶はあまりなく、母親は小学2年生のときに亡くなった。姉と共に祖父母に育てられたが、祖父も他界。育ててくれた祖母に恩返ししたいという強い気持ちを持ち、一軍の舞台で活躍を目指している。

 力強い直球、精度の高い変化球、抜群の制球力と総合力で勝負するスタイルは柳裕也と重なる。1月の自主トレでは柳に志願参加して背中を追いかけている。「(目標とする投手は)柳さんです。プロに入る前は大谷さん(大谷翔平、エンゼルス)、同じ育成出身の千賀さん(千賀滉大、ソフトバンク)でしたが、こんなに良いお手本が身近にいるということで、今は柳さんです」と目を輝かせている。

 育成で同期入団の左腕・上田洸太朗は22年5月に一足早く支配下昇格している。

「育成から一緒に這(は)い上がろうと言っていましたが、いざ先を越されてしまうと……悔しいですね。同期の高橋も活躍していますし、今に見とけよと思っています」

 内に秘めた闘志は熱い。一軍のマウンドで光り輝く日はそう遠くないだろう。

写真=BBM
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