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首位快走の広島 160キロ左腕に他球団「モイネロ級の逸材」驚きの声が

 

交流戦で来日一軍デビュー


マウンドから剛球を投げ込む新外国人左腕・ハーン


 広島が交流戦を10勝8敗で、2017年以来7年ぶりの勝ち越しを決めた。ソフトバンクに同一カード3連敗を喫したが他のパリーグ5球団には2勝1敗と強さを発揮。巨人阪神が苦しむのを尻目に貯金を7に増やし、首位を快走している。その原動力になっているのが、最速160キロ左腕のテイラー・ハーンだ。

 メジャーでは通算57試合登板で6勝7敗1ホールド、防御率4.80を記録。21年にレンジャーズで42試合登板し、104回1/3で92奪三振と三振奪取能力が高いことが大きな強みだ。来日1年目の今季は調整が遅れて開幕を二軍で迎えたが、ウエスタン・リーグで10試合連続無失点と好投を続け、交流戦が開幕するタイミングで一軍に昇格した。来日デビュー登板となった5月29日のオリックス戦(マツダ広島)で、高卒1年目ルーキーの横山聖哉茶野篤政から外角いっぱいの直球で連続見逃し三振に仕留めるなど三者凡退と完ぺきな投球を見せた。

 その後もセットアッパーで好投を続け、6月14日の楽天戦(楽天モバイル)で1点を勝ち越した直後の延長11回に登板。三者凡退で来日初セーブを挙げた。6試合連続無失点で、6イニングを投げて許した安打は1本のみ。四球も1つと安定している。

「予想以上に制球力がきっちり」


 セ・リーグ他球団のスコアラーは「195cmの長身から投げ下ろす直球は角度がある。スライダーも精度が高い。驚いたのは予想以上に制球力がきっちりしていること。力で圧倒する投球スタイルかと思ったら、内外角にきっちり投げ分けている。モイネロ級の難敵になる可能性があります」と警戒を強める。

 6月21日現在、広島の今季148失点はリーグ最少。先発陣は大瀬良大地九里亜蓮床田寛樹森下暢仁アドゥワ誠、玉村昇梧と6枚そろっており、救援陣も安定している、島内颯太郎矢崎拓也塹江敦哉森浦大輔黒原拓未と左右がバランス良い構成で、守護神・栗林良吏は29試合登板で0勝1敗19セーブ7ホールド、防御率0.33と全盛期の輝きを取り戻している。ここにハーンが加われば、さらに厚みが増す。

2018年のVに貢献した助っ人左腕


かつて広島で2018年から22年まで通算178試合登板で32セーブ、45ホールドをマークしたフランスア


 新戦力の活躍はチームに大きなプラスアルファをもたらす。広島が球団史上初のリーグ3連覇を飾った18年に、助っ人左腕で奮闘したのがヘロニモ・フランスアだった。ドミニカ共和国のカープアカデミーに入団し、14年9月に練習生として来日すると、18年3月に育成契約で入団した。5月下旬に支配下昇格すると、8月は18試合登板して防御率0.51で月間MVPを受賞。47試合登板で3勝4敗1セーブ19ホールド、防御率1.66の活躍で、巨人と対戦したCSファイナルステージ第3戦では胴上げ投手になった。

 野球評論家の伊原春樹氏はフランスアの働きぶりを、週刊ベースボールのコラムで高く評価していた。

「それにしても、広島は戦力が豊富だ。主力がケガで欠けたとしても、代わりの選手がその穴を埋める。外国人選手も同様だ。今年はセットアッパー・ジャクソンの調子がイマイチだった。6月は11試合に投げ防御率5.06、7月は3試合に投げ防御率6.75と不調をきたすと二軍へ。代わりに出てきたのがフランスアだった。ドミニカ共和国のカープアカデミー出身の左腕。2014年に練習生として来日し、四国ILなどに派遣され、今年3月に育成選手として広島と契約していた。そして、5月20日に支配下昇格。まさにハングリー精神にあふれる投手だ」

「当初は先発として考えられていたが結果を残せず、中継ぎに転向。これがはまった。ジャクソンに代わり、8回を担うようになると快投を続ける。特に8月は30日のヤクルト戦(神宮)で月間18試合登板。セ・リーグ新記録を樹立し、稲尾和久(元西鉄)、益田直也(ロッテ)のプロ野球記録に並んだ。さらに同日現在、8月は防御率0.51。ピンチになっても動じず、自分のボールを投げ込む。球速以上の伸びを感じる直球の勢いもある。もはやチームに欠かせない存在だ」

 フランスアは翌19年に自己最多の67試合登板で8勝6敗12セーブ18ホールド、防御率2.76をマーク。20年も53試合登板で2勝3敗19セーブ7ホールド、防御率2.45と守護神として活躍した。左腕から最速159キロの直球とスライダーを武器に三振の山を築く投球スタイルは、ハーンが重なる。広島の救世主になれるか。セ・リーグの打者たちを相手にベールを脱ぐときが楽しみだ。

写真=BBM
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