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【高校野球】難しい一戦を制した二松学舎大付 「片井のチーム」になって狙う頂点

 

6回同点劇の裏側


都立の雄・雪谷高との初戦[2回戦]は、延長11回タイブレークでサヨナラ勝ち。2年ぶりの夏の甲子園出場へ辛勝発進となった[写真=BBM]


【第106回全国高校野球選手権東東京大会】
7月11日 神宮球場
▽2回戦 二松学舎大付高5x-4雪谷
(延長11回タイブレーク)

 初戦の入りは難しい。しかも、相手校は1回戦を突破してきた雪谷高。2003年夏に甲子園の土を踏んだ「都立の雄」は毎年、夏を照準に好チームへと仕上げてくる。相当、警戒してきたが、大接戦の展開となった。

 二松学舎大付高は1回裏に1点を先制するも、3回表に逆転(3対1)され、6回表に1点を追加された。6回裏の攻撃を前に、母校を指揮する市原勝人監督は動いた。三塁ベンチ前の円陣で、こう切り出したのである。

「今日は負け。あとは、好きにやって良い。自由にやりなさい」

 四番・三塁でプロ注目の右スラッガー・片井海斗(3年)は高校通算54本塁打。1年夏の甲子園では、史上3人目の「1年生四番」でアーチを放った。2年春のセンバツにも出場し、経験豊富だが「最後の夏の初戦は違います」と、独特な雰囲気にのまれていた。だが、指揮官からの「楽しんで来い!!」と送り出された言葉で、肩の荷が下りたという。一死走者なしから片井の左前打で口火を切り、この回、計3得点で同点に追いついたのだ。

 6回表途中から救援した三番手の左腕・及川翔伍(2年)が好投。試合は4対4のまま延長に入った。無死一、二塁からのタイブレークで、二松学舎大付高は10回表の雪谷高の攻撃を無失点に抑えた。その裏、先頭の主砲・片井は「及川が頑張っていたので、自分が決めてやろう!!」と打席に入ったが、三ゴロ併殺。この回でも決着がつかず、二松学舎大付高は11回裏一死二、三塁から及川の右前適時打でサヨナラ勝ちを収めた。

「四番・三塁」の片井は5打数2安打。6回裏には同点の口火となる左前打。チームのサヨナラ勝利を誰よりも喜んだ[写真=BBM]


 難しい一戦を制した片井は言った。

「チーム全員で勝ち取った白星です。フォア・ザ・チーム。市原監督からは『自分のためでなく、誰かのためにやるほうが強い』と、常日頃から指導を受けています。6回の攻撃を前にした監督の一言が大きかったです」

母校・二松学舎大付高を指揮する市原監督にとっても、ヒヤヒヤの初戦突破だった[写真=BBM]


 市原監督は主砲に、大きな期待をかける。

「(今年は)片井のチームですから。まだ続きがありますので、片井のチームにするために、頑張っていきたいと思います」

 3回戦は岩倉高との対戦が控える。相手校は第四シードのため、3回戦から登場。つまり、夏の「初戦」である。一方、ノーシード校・二松学舎大付高は厳しい初戦を突破した。負けを覚悟したベテラン・市原監督は「これは、大きい」と確かな手応えを得た。21年夏から23年春まで4季連続甲子園へ導いた名将の下、選手たちにもう、怖いものはない。2回戦から7試合を勝ち上がり、2年ぶりの東東京代表を狙うのみ。もちろん、一戦必勝だ。

文=岡本朋祐
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