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伸び悩んでいた甲子園スターが新天地で覚醒か「球がホップしている」オリックス右腕に高評価

 

電撃トレードでオリックスへ


新天地でリリーフとして奮闘している吉田


 オリックスが逆転サヨナラ勝利を飾った7月10日のソフトバンク戦(京セラドーム)。劇的な展開を呼び込んだのが、1点ビハインドの9回に救援登板した吉田輝星の快投だった。

 先頭の川瀬晃の投ゴロに打球処理で足を滑らせたが、下半身で踏ん張り一塁にきっちり送球する好フィールディングでアウトに。甲斐拓也は直球で追い込み最後はフォークで中飛、今宮健太も外角いっぱいの直球でフルスイングさせずに二ゴロと三者凡退に仕留めた。直後の攻撃で味方が逆転し、今季2勝目をマーク。サヨナラ打を放った頓宮裕真と共にお立ち台に上がった表情は大人びていた。

「僕は先発投手ではないので欲張らずに次からもいきたいと思います。練習中や試合中にタオルを持っている人がたくさんいるので、もっとたくさんの人に応援してもらえるような投手になりたいと思います」

「金農旋風」が社会現象になったのが6年前の2018年夏。金足農高の絶対的エースとして秋田大会、甲子園と先発で投げ続け、鹿児島実高、大垣日大高、横浜高、近江高、日大三高と強豪校を次々に撃破した。決勝で大阪桐蔭高に敗れたが、吉田と金農ナインの戦いぶりは大きな反響を呼んだ。日本ハムにドラフト1位で入団し、将来のエースと嘱望された。22年は51試合登板で2勝3敗5ホールド、防御率4.26をマークとセットアッパーとして頭角を現したが、吉田自身は先発へのこだわりが強かった。だが、先発登板でなかなか結果が出ない。昨年は3試合登板のみと不完全燃焼に。オフに契約更改して3日後、オリックスにトレードで電撃移籍が決まった。

投球フォーム修正に手応え


 リーグ3連覇を飾った新天地での役割はリリーバー。高卒6年目を迎え、自身の立場は理解している。与えられた役割で結果を残さなければ、首脳陣の信頼を勝ち取れない。近年は投球フォームで試行錯誤を繰り返していたが、週刊ベースボールの取材で手応えを口にしていた。

「宮崎での春季キャンプ初日から、投球フォームの修正に取り組みました。自主トレでバッチリ固めて行きましたが、いろんな方の話を聞くと、すごく自分にフィットするんじゃないかなと思ったので、また頑張ってフォーム固めに励みました。今は8割の力で投げても、10割で投げたときと球速は変わりません。これまで効率の悪い体の使い方をしていたんだと感じています。意識は大きく変わりますけど、新しいことに挑戦しているというより、改善しているという感じ。グッと力を入れたときでも、バランスよく投げるというニュアンスに近いです。新しい環境で野球をやらせてもらっているので、少しでも恩返しができればと思います」

登板を重ねるごとに自信


 移籍1年目で開幕一軍入りを果たし、5月25日にファーム降格したが、6月4日に再昇格後は12試合連続無失点。27試合登板で2勝0敗7ホールド、防御率4.05で、試合の分岐点になる重要な局面での登板が増えている。他球団のスコアラーは、「一軍に再昇格してから直球の質が明らかに変わりました。球速は140キロ後半と驚く速さではないが、ホップするような軌道なのできっちりはじき返せない。投球フォームがしっくりきているのでしょう。上にふけるようなボール球が少ない。登板を重ねて自信をつけているように感じます」と分析する。

 オリックスはリーグ3連覇を支えた救援陣の山崎颯一郎宇田川優希平野佳寿阿部翔太小木田敦也が故障などでファーム調整している。ブルペンのメンバーが大きく変わる中、吉田の存在は大きい。古巣・日本ハムでは同期入団の万波中正は昨季自己最多の25本塁打とブレークし、今季は田宮裕涼がチーム最多の55試合で先発マスクをかぶり、打率.316のハイアベレージをマークしている。かつての仲間たちの活躍は良い刺激になっているだろう。吉田も負けられない。まだ首位・ソフトバンクの背中は遠いが、逆転優勝に向けて右腕を振り続ける。

写真=BBM
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