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中日に支配下最後のドラフト7位で入団…「巨人の首位打者と重なる」強打者は

 

逆方向にも飛ばすスイング軌道


攻守でチームに欠かせない存在となっている福永


 中日が7月21日の巨人戦(バンテリン)に敗れ、借金が今季ワーストの8にふくらんだ。

 211得点はリーグワーストだが、希望の光はある。現役ドラフトで移籍2年目の細川成也は打率.301、12本塁打、37打点と打撃タイトルを狙える位置に。高橋周平は打撃フォームを改造して輝きを取り戻している。内外野守れるカリステは3割近い打率をキープ。阪神を構想外で退団し、育成契約で加入した板山祐太郎も支配下に昇格して期待以上の活躍を見せている。打撃で試行錯誤を続けている岡林勇希、ファームに降格した石川昂弥は奮起が求められるが、プロ2年目のこの男は攻守で輝きを放っている。福永裕基だ。

 内外野を守り、起用法の幅が広い。一番の魅力は思い切りのよい打撃だ。「四番・三塁」でスタメン出場した7月16日のヤクルト戦(神宮)では、初回二死一塁で先発左腕・山野太一の初球を強振すると、打球は逆方向の右翼席に飛び込む3号2ラン。チームが敗れたため試合後に笑顔はなかったが、12日の阪神戦(バンテリン)から5試合連続で四番を担った。他球団の首脳陣はこう評する。

「いい打者ですよ。ボール球に手を出さず、初球からどんどん振れる。長野久義(巨人)に近いタイプだと思います。コンタクト能力が高く、逆方向にも飛ばすスイング軌道でパンチ力がある。試合で使い続ければある程度の数字を残すでしょう」

26歳で念願のプロ入り


 天理高でプレーした福永は、同学年で智弁学園の主砲だった岡本和真(巨人)と3年夏の奈良県大会決勝で対戦している。6対8で敗れて甲子園出場はならず。その後の両選手は対照的な野球人生を歩む。岡本は高卒ドラフト1位で巨人に入団。3度の本塁打王に輝くなど2018年から6年連続30本塁打を記録し、球界を代表する強打者としての地位を築いた。一方で福永は専大に進学して主軸として活躍。社会人野球・日本新薬でもコンスタントに活躍してドラフト候補に挙げられるが、指名漏れが続いた。ラストチャンスで臨んだ22年のドラフト。中日から7位で指名された。支配下では最後となる69番目。26歳で念願のプロ入りを果たした。

 与えられるチャンスの数は、上位指名の選手と平等ではないかもしれない。だが、結果を残せば階段を駆け上がれる世界だ。通算2543安打に加え、日本記録の通算1065盗塁をマークした福本豊(元阪急)、01年に首位打者に輝くなど通算2000安打を記録した福浦和也(現ロッテヘッド兼打撃コーチ)、現役では2度の首位打者、最多安打のタイトル歴がある角中勝也(ロッテ)はいずれもドラフト7位入団。プロ入り後に球界を代表する名選手として、大輪の花を咲かせた。

守備でも高い貢献度


 貧打が低迷の大きな要因になっている中日に入団したことは、福永にとってレギュラー獲りのチャンスと言える。新人の昨季97試合出場で打率.241、2本塁打、15打点をマーク。6月終了時点は打率.276だったが、相手バッテリーのマークが厳しくなる。思い切りの良さが鳴りを潜めた夏場以降に結果を残せなかった。今年は開幕を二軍で迎えたが、ウエスタン・リーグに27試合出場し、打率.326、3本塁打、17打点、11盗塁をマーク。4月25日に一軍昇格すると、与えられた役割で必死にアピールしている。代打で12打数5安打、打率.417。スタメンでも一番から六番のあらゆる打順で広角に安打を打ち続けている。

 守備での貢献度も高い。「三番・三塁」でスタメン出場した7月6日の広島戦(バンテリン)ではチームを救うビッグプレーを見せた。1点リードで9回一死二、三塁と一打逆転のピンチ。代打・松山竜平が放ったフライが三塁後方のファウルグラウンドに上がった。三塁を守る福永は必死に背走すると、後方にスライディングして好捕。そして、三塁走者・羽月隆太郎がスタートを切ったのを予測し、体勢を崩しながら本塁へワンバウンド送球した。同点の本塁生還を阻止し、勝利をもぎ取った。

 一流と呼ばれる選手は夏場に結果を残す。福永は昨年の悔しさを糧に、後半戦も結果を残し続けられるか。

写真=BBM
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