決勝で激闘を繰り返してきた両雄
9年ぶりの甲子園出場。母校・早実を指揮する和泉監督は優勝インタビューで喜びを語った[写真=菅原淳]
【第106回全国高校野球選手権西東京大会】
7月28日 決勝 神宮球場
▽早実10x−9日大三高
早実が2015年以来、9年ぶり30回目の甲子園出場を決めた。
日大三高との西東京大会決勝を10対9でサヨナラ勝ち。名門校対決で、日曜日も重なり、2万人の大観衆。内野席はほぼ満席となり、外野席も多くの観衆が詰めかけた。
優勝監督インタビューで早実・和泉実監督が声を詰まらせるシーンがあった。全力応援でサポートしてくれた三塁側の応援席を見上げてこう言った。
「たくさんの人が来てくれて、この光景を久しぶりに見られてうれしいです」
あらためて「光景」について感想を聞いた。
「早実ってすごい。早稲田ってすごい。後押し? なければ、負けていましたよ(苦笑)」
早実と日大三高の名門対決に、神宮球場は2万人の大観衆。三塁側の早実サイドは大応援である[写真=菅原淳]
両雄は決勝で激闘を繰り返してきた。
和泉監督は2006年夏を思い出したに違いない。エース・
斎藤佑樹(元
日本ハム)を擁し、日大三高との延長11回に及ぶ決勝をサヨナラで制し(5対4)、春夏連続出場を決めた。当時は第2内野席を含めて、満員札止め。この一戦でたくましさを増した早実は、甲子園で悲願の全国制覇を達成した。
11年夏は1対2で早実が決勝で惜敗。右腕エース・
吉永健太朗(早大−JR東日本)がいた日大三高は、甲子園で2度目の全国制覇を遂げた。主将で捕手の
加藤雅樹(早大−東京ガス)、1年生スラッガー・
清宮幸太郎(日本ハム)がいた15年夏は準決勝で日大三高を2対0で下し、甲子園で4強進出。両校が夏の西東京大会で顔を合わせるのは9年ぶりであった。
「いつも三高に強くさせてもらっている。勝負して勝てば、より一層、強くなる」。和泉監督の言葉にも気持ちが入る。だからこそ、あらためて決意を語る。
「西東京代表として、甲子園で恥ずかしいことはできない。(早実にとっては)久しぶりであり、生徒には『甲子園とは何ぞや』という話をしていかないといけない。具体的に? たくさんありますから、ここ(取材)で言うことできません(苦笑)。三高の涙を見て、(彼らの無念を)背負いながら、大阪に行って、生徒たちともっと強いチームにしたい」
閉会式後、歓喜の早実ナイン。勝負は甲子園である[写真=菅原淳]
和泉監督は「夏の公式戦は1年間の努力に対し、成長を証明する良い場面、良い場所」と語る。勝てば、次につながる。自信になる。
明大八王子高との初戦(3回戦)は1点ビハインドの9回表に追いつき、延長11回タイブレークで勝利。日本学園高との4回戦は、雷雨による継続試合を制した。舞台を神宮に移した国学院久我山高との準々決勝は12対3から追いつかれながら、14対13で勝ち切った。夏でしか経験できないスリリングな展開で、心身ともにタフになった。使い古された言葉かもしれないが、今夏の早実は一戦一戦でたくましさを増した。甲子園はさらに、人を成長させる空間で、次なる戦いから目が離せない。
文=岡本朋祐