日本で成功するタイプの助っ人右腕
優勝戦線に踏みとどまるためには勝ち続けるしかない。正念場を迎えているのが
阪神だ。8月17日の
中日戦(バンテリン)で2点リードの9回に追いつかれて引き分けに。首位・
広島、2位・
巨人と4ゲーム差。逆転優勝に向け、これ以上離されるわけにはいかない。
先発の踏ん張りが求められている中、安定した投球を続けているのが来日2年目のジェレミー・ビーズリーだ。今季10試合登板で6勝2敗、防御率1.73。クオリティー・スタート(先発が6回以上投げて自責点3以下)率は80%とゲームメーク能力が高く、スタミナも十分だ。6月8日の
西武戦(甲子園)では4安打1失点で来日初の完投勝利。119球の熱投で最後まで投げ抜き、お立ち台ではバッテリーを組んだ
梅野隆太郎に感謝の意を込めて決め台詞を拝借。「タイガースファンズ、明日モ、勝ツバイ!!」と叫んだ。
来日1年目の昨年はリリーバーで春先は11試合登板。その後にチーム事情で先発に配置転換された。先発、救援と両方の調整をこなして登板に備え、18試合登板で1勝2敗、防御率2.20をマーク。開幕から先発要員で期待された今年は2月の春季キャンプで右肩の不調を訴えて二軍に合流したが、4月に実戦復帰するとファームで29回連続無失点と復調をアピールし、5月18日に一軍昇格すると安定した投球を続けている。
他球団のスコアラーは、「カットボール、スライダー、スプリットと変化球の質が高い。制球力で崩れる心配がなく、状態が悪いときも大崩れせずに試合をつくれる。日本で成功するタイプの助っ人投手だと思います。29歳とこれから脂が乗りきる時期に入りますし、今オフは争奪戦になる可能性が十分にあると思います」と指摘する。
チャンスをつかんだメッセンジャー
明るいキャラクターでチームにもすっかり溶け込んでいる。リリーバーとして日本でスタートして、先発で大活躍した阪神の助っ人右腕で思い浮かぶのが、来日通算98勝をマークしたランディ・メッセンジャーだ。
2010年から19年まで歴代外国人で球団史上最長の10シーズン在籍したが、1年目は不安定だった。セットアッパーとして期待されて起用されたが結果を残せず、先発がコマ不足のため配置転換。だが、新たな役割でも大量失点を喫するなど力を発揮できず、26試合登板で5勝6敗1ホールド、防御率4.93と不完全燃焼だった。契約延長が不透明だったが、新たに阪神が1年契約を結び、ここからサクセスストーリーが始まった。12年に12勝をマークし、14年は13勝で最多勝に輝くなど7度の2ケタ勝利をマーク。4年連続180イニング上投げるなど大黒柱として稼働し、13年から2年連続最多奪三振のタイトルを獲得した。
阪神を愛する右腕は現役引退後、週刊ベースボールのインタビューで「本当にすごくたくさんの思い出が今でもフラッシュバックのようによみがえってくる。初めて巨人を相手に完封した試合でしょ? クライマックスシリーズで好投した試合でしょ? 本当にあそこは僕が愛すべき場所さ。そして、その僕に応援をしてくれるハンシン・ファンもね、すごいグレート・メモリーだよ」と語っている。
日本で活躍できた秘訣
そして、日本で活躍できた秘訣について以下のように明かしている。
「今もそれが一番大事だと思っている。『do not get Comfortable』。意味は『自分が成功したからといって偉ぶらないこと』。そして『keep open-mind』の心が大事だと思っているし、これからもその気持ちが変わらないよ。(日本に来る外国人選手も)そういう気持ちでいてくれるとうれしいよ。最近は痛みに弱い選手が多いし、バケーションだと思って日本に来ている選手もいるから。そこは勘違いしないでほしい」
「やり続けること、気持ちを常に同じ方向に持ち続けることが、何かを成し遂げることにつながっていくと思う。とにかくベースボールはクレージー、クレージー、クレージーなゲームだから、余計にそういう気持ちで、日本に来てほしいと思うよ」
ビーズリーもメッセンジャーのように、阪神で1年でも長く活躍してほしい。そう願っているファンは多いだろう。残りのシーズンも逆転優勝を信じ、右腕を振り続ける。
写真=BBM