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首位快走の広島でファーム調整中も…新井貴浩監督が認める「天才打者」の復活に期待が

 

激しい優勝争いの真っ最中


優勝に向けて打撃の復活が期待されるベテラン・松山


 広島が首位攻防戦の初戦を取った。8月20日の巨人戦(東京ドーム)。打線が難敵の山崎伊織から4回までに7得点を奪ってマウンドから引きずり下ろすと、投手陣は先発の森下暢仁が5回3失点での粘投。本調子ではなかったが試合をつくり、6回以降は自慢の救援陣が巨人打線を封じ込めて8対3で快勝した。

 2位・巨人を2ゲーム差に突き放したが、今後も厳しい戦いが続く。その中で代打の切り札として復活が待たれるのがファームで調整中の松山竜平だ。昨年は代打で50打数19安打、打率.380をマーク。出塁率.400と驚異的な数字を残した。チーム最年長の38歳は今季も勝負所の活躍が期待された。5月4日のDeNA戦(マツダ広島)で同点の7回に代打で右翼席に叩きこむ決勝3ラン。2年ぶりのアーチを放ったが、その後は14打数1安打と好調が持続しない。6月9日のロッテ戦(マツダ広島)で同点の8回一死一、二塁から代打で左中間に決勝打の適時二塁打を放ったが、7月以降は16打数1安打。59試合出場で打率.194、1本塁打、10打点と結果を残せず、8月に入っても復調の兆しが見えないためファームでの再調整が決まった。

 苦しい思いをしているが、勝負所で松山が必要な時期は必ず来る。その存在は唯一無二だ。2016年から球団史上初のリーグ3連覇に主力選手として大きく貢献。18年はプロ11年目で初めて規定打席に到達して打率.302、12本塁打、74打点をマークし、四番・鈴木誠也(カブス)の後を打つ五番で勝負強さを発揮していた。同年に国内FA権を取得し、オフに去就が注目されたが、残留を決断している。

評論家時代の指揮官が……


 野球評論家だった新井貴浩監督は20年に週刊ベースボールのコラムで、こう振り返っている。

「2018年には国内FA権を取得したまっちゃんから、権利を行使すべきか、相談されたこともありました。そのときは、まずは『まっちゃんの野球人生だから、まっちゃんが決めることだ』というのを大前提としたうえで、私個人の見解として『残ってくれるなら残ってほしいし、客観的に言うならば、まっちゃんはカープに残ったほうがいいと思うよ』と伝えました。まっちゃんは性格的に優しいところがある。球団が変わってガラッと新しい環境になることに、一抹の心配があったんです」

「FA権の取得は、その選手が頑張った証しで、本人が決めるのが一番です。でも私自身、08年から阪神に移籍して、違う球団に行くことが想像以上に大変なことだと分かっている中で、『まっちゃん、大丈夫かな、馴染めるかな』と思ったんですよね。何年も過ごしてきた変わらない環境から離れることは、思ったよりもパワーがいる。だから優しいまっちゃんが苦労するかもしれないと思ったら、親心ではないですが、私の思いとして残留を勧めました」

「残留を決めたときには『新井さんみたいな選手になりたい』と言ってくれたようですね。すごく光栄なことで、うれしいことです。今オフもFA権を行使することはありませんでしたし、これからもカープの一員として、今までどおり、やっていってほしいなと思います」

「すごいセンスの持ち主」


 今季は打撃不振が続いたが、指揮官が我慢強く起用してくれた。松山はその期待に応えたい思いが強かっただろう。「とにかく一日一日、ダメだったら次! と開き直ってやるしかないと思っている。それでダメだったら終わりだと思っている。それぐらい覚悟を持ってやっている」と危機感を口にしていたが、まだまだ老け込むのは早い。

 新井監督はコラムの中で、松山の打撃センスを高く評価していた。

「まっちゃんは、いわゆる“天才型”。ああいう風貌ですが、バットの扱い方、柔らかさ、タイミングの取り方など総合的に見ても、持って生まれたセンスは抜群です。タイプ的に見たら龍馬(西川龍馬)とかぶる部分がありますね。まっちゃんも低めの、ワンバウンドになりそうなボールをヒットにしたりしますから。すごいセンスの持ち主で、不器用な私からしたら、うらやましい限りでした」

 アンパンマンの愛称で、ナインにいじられる松山が打つとチームが活気づく。尊敬する新井監督を胴上げするためにも、一軍に復帰して鋭いスイングをもう一度見せたい。

写真=BBM
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