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【大学野球】改めて逸材ぶりを証明 スカウトコメントで確認できる明大・宗山塁「超目玉」の理由

 

打線を目覚めさせた一発


明大・宗山が東大1回戦で0対0の9回表、先制ソロを放った[写真=矢野寿明]


【9月21日】東京六大学リーグ戦
明大10-0東大(明大1勝)

 明大・宗山塁(4年・広陵高)は「20年に一人の遊撃手」と言われる。なぜか……。秋の開幕戦となった東大1回戦で改めて証明した。

 千両役者である。0対0の9回表。一死走者なしから高めのストレートを右翼席へ運んだ。待望の先制点。開幕試合で硬さが見られた打線も、主将の一打で目が覚めたのか、この回、打者14人の猛攻で一挙10得点を挙げた。神宮でのアーチは、2年秋の立大2回戦以来。リーグ戦通算9号は、99安打目である。死球、遊飛、二ゴロで迎えた第4打席だった。

「打った瞬間の感覚が、違うものがありました。久しぶりに出たな、と。ホームランを狙って打てるバッターではありません。タイミングから1打席ごとに見直した。コンタクトする力が自分の良さ。思い切り振った中で率を上げる。まずは、1本打てたのは良かった」

 ただ、反省も忘れない。

「(得点圏で3度)チャンスが回ってきて、ものにできないと厳しい試合になる。完全になくしていきたい。勝敗に関わる一本を常に意識して、試合の流れに敏感になり、求められる場面での一打に集中したいと思います。1試合ずつ強くなっていくのが、優勝への近道。今日できなかったことを明日、できるように課題を一つひとつ、つぶしていきたい」

 特別な日だった。今春は右手中指第一関節骨折のため、開幕3カード目から8試合を欠場した。夏場を経て、ケガからの復帰戦だった。

「もう1回、グラウンドに立てる幸せを感じながらプレーしていました。久しぶりに(神宮に)戻ってきたな、と。何打席かで慣れてきたので、精度を上げていきたい。チームとして、リーグ優勝が目標です」

視察したスカウトは絶賛


大学通算9号。開幕戦で放ったホームランボールを手に笑顔を見せた[写真=矢野寿明]


 神宮球場のネット裏にはNPB10球団が視察。2024年ドラフトの「超目玉」と言われているが、その理由を、スカウトコメントから確認することができる。

「春はアクシデントで離脱しましたが、もともと体が強い選手。クロスプレーでも、対処の仕方にセンスがあります。守りに派手さはないですが、基本がしっかりしている。キャッチングも両手で丁寧です。一歩目のスタートが良い。入団1年目からどんどん起用していけば、15年は遊撃のレギュラーを任せられます。御殿が建つぐらいの実績を残せる」(広島苑田聡彦スカウト部顧問)

「さすがの一発でした。一球で仕留められる力。試合前の打撃練習を見ていても、飛距離が出ますね。開幕前のオープン戦を視察しましたが、守備も春よりもレベルアップしている。どこも(1位で)ほしいでしょう。スター性がありますし、見ているほうもワクワクする。(ファンを)引き付ける力を持っており、プロでの活躍ができます」(ロッテ榎康弘アマスカウトグループディレクター)

「ケガ前よりも復帰後のほうが、明らかにパワーアップしています。リハビリ期間中はウエートトレーニング、明治グラウンド入口にある坂道でダッシュを繰り返す姿を見てきました。3年時まではアベレージを残す上で、アジャストする打撃でしたが、今年はコンタクト率を残しつつ、飛ばす力が加わりました。(プロでは)守備から入っていける選手なので、試合を重ねていくごとに一軍の投手のボールにも慣れてくるはず。攻撃型の遊撃手ですと、打てなければ出場機会は減る。一方、守りだけでは、常時、出場することはできない。宗山選手はすべてを兼ね備えていますから、1年目からチャンスが広がってくると思います」(ソフトバンク・宮田善久スカウト)

「即戦力で間違いないです。このクラスのショートは、なかなか出てこないと思います。どれだけ(1位入札で)集まるか……。打撃は相手のあることですので、状況に応じた対応力が必要ですが、十分にその良さがあります。(自身は現役時代に遊撃手)守備は次元が違う。スタート、捕球、スローイングと安定していて、見ていて、安心感があります」(楽天沖原佳典スカウト)

 過去のドラフトにおける1位指名の最多重複は1989年の新日鉄堺・野茂英雄、90年の亜大・小池秀郎の8球団である。ドラフト戦線において好投手は毎年、出てくると言われる。宗山は打てて、守れるショートであり、チームをけん引するリーダーシップもある。各球団によって補強戦略もあるが「20年に一人の遊撃手」の評価であるならば、競合覚悟で1位入札するだけの価値がある。10月24日のドラフト会議から早くも目が離せない。

文=岡本朋祐
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