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【大学野球】法大・篠木健太郎&中西祐樹 木更津総合高出身バッテリーが立大戦勝利に貢献

 

高校時代の忘れられない試合


法大は木更津総合高出身バッテリーで、立大3回戦を雪辱した。左は4年生エース・篠木、右は2年生捕手・中西[写真=BBM]


【9月23日】東京六大学リーグ戦
法大4-2立大(1勝1敗1分)

 試合後取材後の写真撮影。立大3回戦で132球、2失点完投した法大・篠木健太郎(4年・木更津総合高)は「ここで、中西と一緒に写れるとは……」と笑顔を見せた。

 同1回戦に続いてバッテリーを組んだ中西祐樹(2年)は、高校の2学年後輩に当たる。中西は同1回戦がリーグ戦初出場。3回戦は2回表に一時同点となる右前適時打が、リーグ戦初安打。1点を勝ち越された直後の8回表、一死一、二塁から七番・篠木の左中間適時三塁打で逆転すると、次打者の中西は鮮やかなスクイズを決めた。4対2。法大は対戦成績を1勝1敗1分のタイと雪辱して、勝ち点をかけた4回戦へと持ち込んだ。

 中西は適時打のシーンと、試合を振り返る。

「緊張しましたが、チャンスの場面で、勇気を持って、初球から振ることができました。篠木さんからは、試合前に『責任は取るから!!』と後押ししていただき、思い切って、勇気を持ってプレーすることができました」

 高校では3年生と、1年生の間柄。篠木は3年時に「関東No.1右腕」と、ドラフト上位候補に挙がっていた。昭和生まれの人間からすれば、2歳上の先輩は「神様」のような存在。だが、平成生まれでは、その距離間もだいぶ変わったようだ。中西は明かす。

「気軽に、いろいろと聞ける先輩でした。練習でもブルペンでボールを受ける機会に恵まれました。神様ではないです……(苦笑)」

 忘れられない試合がある。2020年8月18日、千葉県野球場。木更津総合高は専大松戸高との決勝で勝利(2対1)し、千葉県高野連主催の独自大会を制した。主将で五番・エースの篠木は自己最速にあと1キロに迫る149キロを武器に、歓喜のときを迎えた。

 同夏はコロナ禍で、甲子園出場をかけた千葉大会が中止。多くの関係者の尽力で大会が開催され、篠木は「感謝」を胸に、有終の美を飾った。甲子園大会が中止となっても、県大会を制覇して甲子園切符が得られなくても、モチベーション高く、勝利への執念は変わらない。高校3年間、指導を受けた五島卓道監督に「県王者」という形で、恩返ししたい思いが強かった。

 控え捕手の中西は、1年生ながら背番号13でベンチ入り。当時の思い出を語る。

「篠木さんはキャプテンでエース。声と背中、プレーでチームを引っ張っていました。自分も3年時に主将を務めさせていただきましたが、篠木さんの背中を追いかけてきました」

後輩に届いた先輩の生き様


7回裏に1点を勝ち越された法大は、8回表一死一、二塁から七番・篠木が左中間へ逆転三塁打。三塁への気迫のヘッドスライディングを見せた[写真=BBM]


 話を戻す。立大3回戦。篠木は中1日での先発。法大は1敗1分とあとがなかった。

「崖っぷちからが、本当の勝負。ギリギリになるほど、楽しい。勝負に燃えるタイプ。燃えないと、男ではない」。篠木はアドレナリン全開。「試合前に高村さん(高村祐、助監督)に『今日はお前の日だから勝て』と言われたんです。勝つ気持ちだけで、投げました」。

 大島公一監督はこの日、篠木の打順を通常の九番ではなく、七番に上げた。「2、3日前の打撃練習から良かった。今日は託すつもりでした。違う打順も考えたんですけど、ね……」。8回表には先述のとおり、逆転2点左中間三塁打。篠木は一塁を蹴ったあたりからトップスピードに入り、迷いなく三塁へ。最後はヘッドスライディングで、三塁ベースを何度もたたき、喜びを表現。すぐ近くで見ていた、三塁応援席の控え部員にもガッツポーズを見せた。

「(投手ですから、頭から行くのは)危ないとは思う。自分は経験を積ませてもらっていて、引っ張っていかないといけない立場。気持ちが入りました」

 リードした8、9回はギアを上げ、140キロ台中盤のボールを連発して、力で押した。9回裏、最後はこん身のガッツポーズを見せた。

「自分が1年生のとき、4年生の(主将でエースの)銀二さん(DeNA三浦銀二)、(高校の先輩でもある)山下さん(ヤクルト山下輝)がマウンドを守る姿、抑える姿を見てきました。自分も後輩に何かを残したい。まだまだ先はありますが、一つ形になった」

 大島監督は現実的にはないにしても、一番の起用も考えたという。それだけ篠木の持つ影響力に期待していた。逆転三塁打の場面を振り返り「(一塁、二塁から)生還してくる野手よりも(三塁へ向かう篠木のほうが)速かった。目が追いつかなった」と苦笑い。「全力疾走をしたほうが、投球内容が良くなっていく」と評価し「いろいろなことを、篠木から教わっています」と、背番号18を称えた。

9回裏二死二塁から、最後の打者を左飛に打ち取ると、こん身のガッツポーズを見せた[写真=BBM]


 2年生・中西にも先輩の生き様は届いていた。

「気迫、気持ちを引き継いでいきたい」

 勝ち点をかけた4回戦を前に、篠木は言った。

「監督も言うように、勝ちにこだわっていく。また、中西とともに良い試合を作っていきたい」。もちろん、4回戦もブルペン待機するが、一方では、中3日で春の覇者・早大との第3週が控えていることも、見据えておかないといけない。法大としては2020年春以来のV奪還を目指す上で、エース以外の投手陣で総力戦をしのぐことが、以降の戦いにつながる。そこは、ベンチが掌握しておけばいい領域。まずは、立大4回戦の勝利に集中する。

文=岡本朋祐
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