池田高出身の右腕
日体大の150キロ右腕・篠原はチームの首位に貢献している[写真=大平明]
【9月29日】首都大学一部リーグ戦
日体大2-1東海大
(日体大2勝)
首都大学リーグ第4週2日目。前日の勝利により勝率の差でトップに立った日体大。その1位の座を盤石にするためにも、白星を挙げたい東海大との2回戦で、先発に指名されたのが篠原颯斗(3年・池田高)だった。
篠原はかつて「やまびこ打線」として甲子園を席巻した徳島の池田高出身。3年夏はエースとして徳島大会準決勝敗退で、甲子園の土を踏むことができなかった。プロ志望届を提出することはなかったが、当時からプロへの気持ちは強く、
松本航(
西武)や
矢澤宏太(
日本ハム)らを育てた
辻孟彦コーチの指導を受けるために日本体育大に進学した。
「4年後にプロへ行くためには、どこに進学すればよいのかを考えて決めました」
辻コーチは「一人でマウンドを守り続けている姿が印象的で、高校時代からもまれていたので、一発勝負に強い印象がありました」と振り返る。入学直後は肘の故障もあり、リーグ初登板は2年春。東海大2回戦では先発して5回を無失点に抑えて初勝利。
「投げてはケガの繰り返しで故障中はランニングとウエート・トレーニングに取り組んできたのですが、そのおかげで尻まわりと下半身の筋肉量が増えました。(初勝利を挙げた試合は)腕を振って投げることができていましたし、ゼロに抑えられてよかったです」
2年秋には自己最速150キロを記録。ただ、その後も故障が多く、3シーズン連続で登板は3〜4試合。勝ち星は1勝のみと伸び悩んだ。この春も右肘に不安があったが、春季リーグの2週目に復帰。現在は「しっかりとケアをすることで、肘はまったく問題なく投げられています」と不安が一掃された。
辻コーチの指導の下、この冬から取り組んできたフォーム修正がはまった。
「これまでは投球動作に入った時に、一旦、グラブを顔よりも上にあげ、それから下げて投げていたのですが、その縦の動きによって体がブレてしまっていたんです。そこで、グラブを上げずに最初から低く出すように変えました。最初はボールの威力が落ちてしまったのですが、体の使い方を覚えていくにつれてスピードも戻ってきて、ボールがヒザ元に集まるようになりました」
今夏は投げ込みを行ってきた。
「ブルペンに入った時は100球から120球。それを週に2、3回やってきました。とにかく低めに強いストレートを投げることに専念し、半分以上は真っすぐを投げていました」
真っすぐが低めに制球できるようになったことで、自然と変化球もローボールに集まった。この投げ込みにより、精度が増したのがスプリットだ。「夏のオープン戦からコントロール良く投げられるようになりましたし、一番、自信があります」
「タイトルを獲りたい」
迎えたこの秋のリーグ戦では開幕2戦目の桜美林大2回戦で先発。自己最速タイの150キロをマークし、8回を1失点の好投。さらに、翌週の筑波大戦では初めて1回戦の先発に起用され、8回無失点で今季初勝利。さらに第3週の筑波大3回戦では「調子は良くなかったのですが速球と変化球のコンビネーションで抑えることができました」と10安打を浴びながらも1失点の粘投で2勝目を挙げた。
3カード目となった東海大戦は右腕エース・
寺西成騎(4年・星稜高)が復帰したこともあって2回戦に先発。ピンチを迎えても「バッターも『打ちたい、打ちたい』と思っているからボールで球も振ってくれるので、際どいところに投げられました」と強心臓ぶりを発揮して得点を許さない。
5回裏にはヒットと盗塁で一死二塁とされるが、大前圭右(2年・大阪桐蔭高)を空振り三振。大塚瑠晏(3年・東海大相模高)もフルカウントからストレートで見逃し三振に仕留め、無失点で切り抜けた。
篠原の熱投に応えるように、打線は8回に鈴木斗偉(2年・山梨学院高)の2点タイムリーで先制。篠原は8回途中で降板したが「『3年生が活躍して、投手陣を底上げしていこう』と話し合っている」という同級生の伊藤大稀(3年・智弁和歌山高)が反撃を1点に抑えて2対1。投手戦を制した日体大が連勝で勝ち点を3に伸ばし、首位を堅持。篠原も3勝目を挙げた。この活躍に、古城隆利監督は「篠原には主戦として『チームへの責任を感じて投げていくべき』という話をしたのですが、苦しいといころを耐えきってくれました」と賛辞を送っている。
「今季はシーズンを通して投げ切るのが目標。5勝、6勝と白星を重ねて、タイトルを獲りたい。そして、リーグ優勝に貢献して、日本一を目指したい」
もちろん、プロ入りへの夢も不変だ。
「寺西さんが目標です。ただ、今は平均球速で2〜3キロ劣っていますし、変化球も寺西さんのほうが良くて多彩なので、もっと近づいて追い越していかないと。そのためにも一球一球の強さを上げていきたい」
目標に掲げている寺西も、故障を乗り越えてドラフト候補まで上り詰めた。身近な先輩を良き手本として、さらなる成長を図っていく。
文=大平明