「結果がすべての世界」
2年目の今季、大きな成長を見せた森下
日本シリーズ進出を目指すCSファイナルステージの舞台に、昨年日本一輝いた
阪神の姿はなかった。球団史上初のリーグ連覇は叶わず、2位でCSファーストステージに挑んだが、本拠地・甲子園で3位の
DeNAに2連敗を喫して終戦。今季限りで勇退する
岡田彰布監督は週刊ベースボールのコラムで、こう振り返った。
「オレはいつも『普通にやればいいんよ、普通にな』と言う。そら重大局面に立てば、力みも出て、普通にプレーできないことがある。それは理解した上で、あえて『普通』にできることを説いてきたつもりよ。それができるのが正真正銘、本当のチーム力と評されるべきもの。ミスは野球にはつきものよ。守備ミスもあれば攻撃のミスもある。バント失敗とか進塁させるべき場面でそれができない。こういうことを普通にできるようにならないと、長いシーズンを制することはできないのだ。結果は2位。よく盛り返して、頑張った2位とも言える。でもね、オレは思うわけです。プロとして頑張った……というのは、まったくうれしくない評価。プロに頑張ったは、いらん。あくまで結果がすべての世界なんやからね」
「すでに今季限りで監督を退くことが発表されている。昨年はリーグ優勝、そして日本一になり、今年は粘った末の2位やった。『よくやった』という声があるのは分かっているけど、オレは悔しくて仕方ない。その悔しさをチームとして晴らすチャンスがこのCSやったけど、10月13日、DeNAを止めることはできなかった。1戦目の負けのあと、トラ番に言うたわ。今年を象徴するような試合やったとね。チグハグというのか、タイガースの強み、良さをなかなか出せずに終わってしまった。これですべてが終わった」
「(1次政権で退任した)16年前、選手に送り出されたとき、オレはこらえきれずに涙を流した。あれから16年です。試合が終わったあと、涙はなかった。静かにベンチを出た。そうするしかなかった。2004年からの5年間。そして昨年からの2年間。計7年間の阪神監督生活を終えることになった。その間、リーグ優勝が2度、球団史上2度目の日本一もあった。本当にファンの皆さんの声援が強いエネルギーになった。あらためて『ありがとう』と伝えます」
後半戦の阪神で最も怖い打者
岡田監督が指揮を振るった2年間で常勝軍団の礎を築き、多くの選手が素質を開花させた。その筆頭格が
森下翔太だろう。プロ2年目の今季は129試合出場し、打率.275、16本塁打、73打点をマーク。打撃不振で7月上旬にファームで再調整したが、一軍に再昇格すると広角に鋭い打球を打ち分け、打率2割2分台から一気に上昇した。得点圏打率.351と勝負強さも際立つ。CSファーストステージは2試合で8打数5安打、打率.625、1本塁打、2打点と奮闘。第2戦の初回二死でアンドレ・
ジャクソンの内角低め153キロの直球を弾丸ライナーで左翼席に運ぶと、球場がどよめいた。
他球団のスコアラーは「後半戦の阪神で最も怖い打者が森下でした。コンタクト率が格段に上がり、どの球も長打を打たれる怖さを感じた。大学のときはパンチ力が魅力でしたけど粗さがあったのでプロで対応するのに時間が掛かるかなと感じましたが、驚きの成長曲線です。来季は打撃タイトルも十分に狙える。対策が必要ですね」と警戒を強める。
まだ戦いは終わらない。11月に開催される国際大会「プレミア12」で侍ジャパンのメンバーに選出されている。昨年のWBCで世界一を経験した
岡本和真(
巨人)、中大の先輩でもある
牧秀悟(DeNA)と共に日の丸のユニフォームを着て、ドミニカ共和国、キューバなど世界の強豪国と対戦することは大きな財産になるだろう。阪神の強打者から、球界を代表する強打者へ。新人の時から我慢強く起用してくれた岡田監督に恩返しするためにも、さらなる飛躍が期待される。
写真=BBM