士気が高まるマウンドさばき
早大・伊藤樹は2024年、春を通じて9勝無敗。背番号11の仕事にまっとうしている[写真=矢野寿明]
【10月19日】東京六大学リーグ戦第6週
早大3-2明大(早大1勝)
6勝1敗1分け、勝ち点3の相星決戦で迎えた明大戦。早大は2勝1分けで勝ち点4を挙げた。1回戦を8回1失点で勝利投手となったエース・伊藤樹(3年・仙台育英高)は、中1日で迎えた3回戦を8回無失点。今季6勝目は137球、まさしくエースのピッチングだった。
早大は春秋連覇へマジック1。明大が第8週の法大戦で1敗、もしくは、早大が第9週の慶大戦で1勝すれば、リーグ優勝が決まる。
明大・田中武宏監督は「1戦目と一緒。伊藤君に丁ねいにほうられて、対応できなかった。打ちたいとしたところで、ボール球を振らされた」と脱帽した。2安打を放った主将・
宗山塁(4年・広陵高)も「制球力、変化球の精度が高い。的を絞らせてくれず、思うようなスイングができなかった」と語った。
心身とも疲労はピークだったが、言い訳はしない。当然のように、マウンドに立った。3、5回を除いて走者を背負うも、粘投を見せた。「生命線」というスプリットとチェンジアップをコーナーに集め、勝負どころではキレのあるストレージが決まった。バッテリーを組む正捕手の主将・
印出太一(4年・中京大中京高)との相性は抜群であった。
「中1日で難しい試合になる、と。ランナーを背負ってから、ゼロに抑えられた。テンポも良くなかったが、野手が守ってくれた。丁ねいに投げたことで、結果が出たと思います」
早大・伊藤樹は8回無失点で勝利投手。試合後、6勝目のポーズを見せた。左は右腕・田和廉[3年・早実]。9回の1イニングを無失点で逃げ切った[写真=矢野寿明]
小宮山悟監督は試合後「チームの士気が高まるマウンドさばき。(背番号)11が似合ってきた」とニンマリ。最高の誉め言葉である。小宮山監督はかねてから実力の高さを認めていたが、一方で取り組みの甘さを指摘してきた。自覚と植え付けさせ、奮起を促すため、今春から伝統のエース番号11を伊藤樹に託した。指揮官の期待に見事、応えているのである。
「気を緩むことなく、(早慶戦で)連勝して、完全優勝で秋を終わらせたい」
今秋は先発7戦で6勝0敗。防御率1.19でリーグトップに立った。今春は3勝0敗。伊藤樹はかねてから「年間無敗」を掲げており、最終カードでも勝利に徹した投球を貫く。
文=岡本朋祐