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5球団競合の宗山が楽天へ 今江敏晃前監督が電撃解任も「良い球団に入った」理由とは

 

育成能力が高い楽天


5球団競合の末、楽天が宗山の交渉権を引き当てた[写真=矢野寿明]


 今秋のドラフトの目玉として注目されていた「大学生No.1遊撃」の宗山塁はドラフト1位で西武、楽天、広島日本ハムソフトバンクの5球団が競合。楽天が交渉権を獲得した。

「20年に1人」と呼ばれた逸材の当たりクジを引き当てた楽天の森井誠之球団社長は、興奮を抑えきれなかった。右手で力強くガッツポーズすると、「スカウト担当者の全員が『とにかく一番の選手でいこう』と私を送り出してくれたのでほっとしています。東北からスケールの大きい日本中の野球ファンを魅了する選手に育ってもらいたいです」と声を弾ませた。

 3年連続Bクラスに終わり、今江敏晃前監督が2年契約の1年目を終えた今季限りで途中解任されたことが大きな反響を呼んだが、20代の若手たちがチームの中心を担っており、育成能力が高い球団と言えるだろう。今季は辰己涼介が自身初の最多安打(158本)のタイトルを獲得。小郷裕哉は12球団で唯一全試合フルイニング出場を果たし、リーグ2位の32盗塁をマークした。昨年盗塁王を獲得した小深田大翔は29盗塁を記録し、リーグトップの25犠打と打線の潤滑油に。遊撃の村林一輝も139試合に出場し、プロ9年目で初の規定打席に到達した。打率.241、6本塁打、50打点をマークし、高い守備能力でチームを幾度も救った。

「20代の選手が次々に台頭している球団はなかなかない。宗山は良い球団に入ったと思います。村林とハイレベルな定位置争いを繰り広げることでチーム全体のレベルも上がる。三木肇監督は野球を知っている指揮官なので、学びがたくさんあるでしょう」(スポーツ紙記者)

「チャンスは一瞬」


 三木監督は日本ハム、ヤクルトで内野守備走塁コーチ、ヘッドコーチを歴任。中田翔(中日)、西川遥輝(ヤクルト)、山田哲人(ヤクルト)ら球界を代表する選手たちの育成に尽力を注いだことで知られる。2019年に楽天の二軍監督に就任すると、翌20年に一軍の監督に昇格。だが4位に終わると、翌21年は二軍監督に戻った。楽天のファームは19年に球団初のイースタン・リーグ制覇を果たすと、20年(三木監督は一軍の監督)、22年に日本一に輝いている。村林や小郷は二軍で三木監督に鍛えられ、一軍に定着した選手だ。指揮官は「彼らは散々怒られているんだよ。ミスをしたり、態度がよくなかったりしたらものすごくね」と週刊ベースボールの取材で明かしたうえで、こう続けている。

「チャンスは一瞬。その少ないチャンスをモノにできるかが勝負の世界で求められるスキル。できなければクビになる。その覚悟をもって普段から来たる一瞬のために準備ができているか。それを選手に求めている」

「状況を見ながら、その時々でそれぞれの選手にあった声を掛けなくてはいけない。それは観察ではないんだよね。そして会話じゃなく対話なのだと。対話をするためにはしっかりと選手を見ていないといけないし、対話したあとも見ていないといけない。ずっと見てくれている人だからこそ、選手も耳を傾けるんです」

球界を代表する名遊撃手へ


 宗山は指揮官が重視する「準備」を大切にする選手だ。1年春からリーグ戦デビューし、首位打者を獲得した2年春からリーグ戦3連覇に貢献。大学3年まで通算70試合で打率.348、94安打、8本塁打、44打点の好成績を残した。4年春にオープン戦で死球により右肩肩甲骨を骨折し、リーグ戦途中にも右手中指骨折で後半3カードを欠場するなど本来の力を発揮できなかったが、落ち込む時間はない。「野球がうまくなるためには何が必要か」と考えながらリハビリに取り組んでいた。4年秋は残り1カードの法大戦を残し、46打数18安打、2本塁打、11打点、打率.391(10月31日現在)と見事に復活した。

 パ・リーグは源田壮亮(西武)、今宮健太(ソフトバンク)、紅林弘太郎(オリックス)などチームの中心選手として活躍する遊撃がそろっている。彼らを追い越し、球界を代表する名遊撃手になれるか。杜の都で宗山の新たな挑戦が始まる。
週刊ベースボール編集部

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