一挙7点の猛攻をおぜん立て
初めて日本一チームの一員となった佐野
7年ぶりの日本シリーズに出場した
DeNAが11月3日、本拠地・横浜スタジアムで
ソフトバンクを11対2で下して4勝2敗で日本一の座に就いた。優勝が決まった第6戦の5回一死一、二塁に代打で打席に立ったのが
佐野恵太だ。右前打でつなぎ満塁に。この回、一挙7得点で勝負を決めたおぜん立てをした。
CSファイナルステージ・
巨人戦では第1戦で、4回に
戸郷翔征の高めに浮いたフォークを右翼席に運ぶ先制ソロ。2対0で勝利し、この一発が決勝打となった。第4戦で9回に相手守護神・
大勢の155キロ直球が右膝付近を直撃し、痛みをこらえきれずその場に倒れ込んだ。足を引きずりながらベンチ裏に下がり代走が送られて心配されたが、翌日の第5戦にスタメン出場。この試合でも9回に右足に死球を受けた。CS全体を振り返ると、打率.136と本来の状態とは言えなかった。
昨年味わった悔しさ
体は満身創痍だが、昨年味わった悔しさを考えればグラウンドに立てる喜びが大きいだろう。2020年に首位打者、22年に最多安打を獲得と球界を代表する巧打者として活躍してきたが、昨年は打率.264、13本塁打とレギュラーをつかんだ20年以来でワーストの成績に終わった。8月6日の
阪神戦(横浜)では、 1点差を追いかける7回一死二、三塁の好機で、4年ぶりの代打を送られた。佐野は週刊ベースボールのインタビューで、こう振り返っている。
「確かにバッティングの技術面も良くはなかったんですけど、それと同じくらい精神面も良い状態ではなかったな、と。焦りや不安を拭えないまま試合を重ねていって……。それが野球のパフォーマンスの足かせになっていました」
「僕としてはやっぱり、ここまでバット一本で野球の世界を生き抜いてきたつもりだったので、(代打を出されて)経験したことのないようなショックを受けました。でも、久々の感情を味わうこともできた。結果を出せば試合に出られるし、結果を出さなければ試合に出られない。そういうプロの厳しさ、勝負の世界にいるんだということを数年ぶりに思い知らされました。そこで投げやりになるのではなく、なにくそと思って野球に取り組めたのは、唯一、救いのあるところかなと思います」
悔しさを糧に、シーズン終盤に打撃の状態を上げていったが、右有鉤骨骨折で戦線離脱。
広島に敗れたCSファーストステージはリハビリ中でグラウンドに立てなかった。
打撃フォーム改造に着手
今年は打撃フォーム改造に着手。昨年までは投手に背中の背番号が見えるクローズドスタンスだったが、スクエアスタンスに変更した。
「ダメなシーズンのあとでもありましたし、思い切って新しいことに取り組むには良いチャンスだな、と。僕のクローズドスタンスはここ3年ぐらい、角度が年々きつくなって、打てるボール、打てないボールが自分の中でもはっきりしてきている感覚がありました。打てないボールは打てないと割り切ってきましたけど、(スタンスを変えることで)もしかしたら対応できるようになるかもしれないなって。そういう思いはずっとあったんですけど、やっぱり、変えるのは勇気が必要なことでもあるので」
今季は139試合出場で打率.273、8本塁打、62打点。2年ぶりの打率3割には届かなかったが、主に三番で
牧秀悟、
オースティン、
宮崎敏郎と共に打線を牽引した。
シーズン中には国内FA権を取得。スポーツ紙記者は「内角をさばく技術は天才的ですし、年を重ねても安打を打ち続ける能力がある。FA権を行使すれば、複数球団の争奪戦になる可能性が考えられます」と話す。
野球人生の分岐点になる大きな決断だが、日本シリーズ後には「納得のいく決断をしたい」と熟考する姿勢を示した。果たして、ハマの背番号7の未来は――。
写真=BBM