「一番、良い状態で戦ってもらいたい」
東京都秋季大会の決勝は16時30分のプレーボール。8000人の観衆が両校の大熱戦を見届けた[写真=田中慎一郎]
【11月7日】秋季東京大会決勝
二松学舎大付高6x-5早実(延長12回)
東京都秋季大会決勝が11月7日、神宮球場で行われた。準決勝(3日)から中3日。そして、試合開始は16時30分。他の9地区では見られない大会運営である。東京都高野連・根岸雅則専務理事は、理由を語った。
「来春のセンバツへの資料となる大会です。言うでもなく、決勝は大事な一戦となります。準決勝からの連戦ではなく、一番、良い状態で戦ってもらいたい。また、神宮球場でプレーしてもらいたいという意向がありました」
かつて、秋の東京都大会の主戦場は神宮第二球場(2019年11月3日の準々決勝が最後の使用)だったが、収容人数の関係もあり、2013年以降の準決勝、決勝は神宮球場(16年の準決勝は神宮第二球場)で行われている。
神宮球場は学生野球とプロ野球が共存するスタジアムである。今年の日本シリーズはセ・リーグ本拠地が第1、2戦(10月26、27日)であり、第6、7戦(11月2、3日)も予定されていた。
ヤクルトが進出することを見据え、東京六大学野球連盟では2022年から偶数年を9週制としている。日本シリーズ開催の可能性がある第7、8週は単独カード(日本シリーズがある場合は10時開始、ない場合は13時開始)が組まれていた。事前に予定を決めるため、東京都高野連が11月2、3日に神宮球場を使用することは難しかった。そこで準決勝を3日に設定して、試合会場は東京のメーン会場の一つであるスリーボンドスタジアム八王子とした。
決勝の舞台は神宮に用意された。7日は木曜日。薄暮のプレーボールにも、連盟サイドの思惑があった。
「昼からという選択肢もあるかと思いますが、学校の授業がありますので……。あくまでも学校教育の中でのクラブ活動という基本理念があります。学生野球は教育の一環。生徒たちが一緒に授業を受けている野球部員を、球場で応援するのは貴重な場です。教育的な配慮で16時30分開始としました。選手は寒さの対応に難しい部分があったと見受けられますが、多くの生徒が応援できて良かったです」
スタンドは8000人。内野スタンドは多くの観衆で埋まり、試合開始から17時以降は、仕事帰りのサラリーマンの姿も徐々に増えていた。応援席では、両校による応援合戦が展開。一般生徒も大声援を送った。外野席では加盟校の部員たちが固まって観戦。試合は延長12回タイブレークの大熱戦となり、今後の活動における参考、活力となったはずだ。
21年ぶり3度目の優勝を遂げた二松学舎大付高・市原勝人監督は言った。
「寒かったですね(苦笑)。試合前に打撃練習ができたり、プロ野球みたいな特別感がありました。勝たせていただいたから言えるかもしれませんが、寒ささえなければ、良かったです」
早実の選手はナイトゲームに慣れるまで時間がかかり、内野手は捕球の際、照明により目測を誤り、また、捕手が1人の打者に2つの捕逸を記録するシーンがあった。一方で、二松学舎大付高は落ち着いたプレーを見せ「ウチのグラウンドにも照明はありますが、薄暗いので……。ここのほうがよっぽど明るい」と、市原監督は苦笑いを浮かべた。
オープン抽選のシード制なし
今大会はもう一つ、大きな動きがあった。2020年秋から昨秋まではシード制が導入されていた。夏の西東京大会、東東京大会でベスト8以上だった16校については、一次予選を勝ち上がった場合、本大会ベスト16までは対戦がないよう、あらかじめ振り分けた。これが、見直しに。オープン抽選のシード制なし。つまり、1回戦から強豪校が激突するカードも生まれた。ただし、夏の甲子園出場2校については一次予選免除の措置がされた。
「各加盟校とも、夏が集大成です。秋の新チームになって、夏の残像が残るのはどうか、と……。東・西の代表校については、甲子園大会後から9月上旬の一次予選までに新チームを作り上げるのは難しいんです。連盟内で同意を求め、今回から一次予選免除としました。次年度以降も、この運用は継続してやっていきたいと思っています」(根岸専務理事)
東京都高野連は、あくまでもアスリートファーストに立った大会運営を目指す。来年も神宮球場の使用状況などを踏まえて、大会日程については柔軟に対応していくという。
文=岡本朋祐