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今季未勝利で防御率6.10も…覚醒した井上温大と重なる「巨人の左腕」は

 

来季2年目のサウスポー


 プレミア12で大会連覇を狙う侍ジャパン。11月13日に行われた初戦・豪州戦(バンテリン)で先発を託されたのが、巨人の左腕・井上温大だった。

 躍動感あふれるフォームから左腕を振り続けた。初回二死三塁とピンチを迎えたが、四番のウィングローブを内角低めのツーシームで空振り三振。2回以降も連打を許さず、直球、スライダー、フォーク、ツーシームを武器に相手打線を封じ込めた。6回途中5安打2失点。8奪三振で無四球と抜群の制球力でテンポよくアウトを重ねた。

 マウンドさばきに、自信があふれている。今季は自己最多の25試合登板で8勝5敗、防御率2.76。4年ぶりのV奪回に大きく貢献した。巨人は先発左腕の台頭が待ち望まれていた。かつては高橋尚成内海哲也(巨人一軍投手コーチ)がエースとして活躍していたが、2021年に高橋優貴が11勝を挙げて以来、日本人左腕で2ケタ勝利を挙げた投手が誕生していない。高橋もその後は伸び悩んで今季限りで退団。15勝をマークして最多勝に輝いた菅野智之が今オフ、海外FA権を行使してメジャーに挑戦する意向を表明しており、井上は2ケタ勝利をノルマに活躍が期待されると共に、新たな力の台頭が求められている。その有力候補の一人が、来季プロ2年目の又木鉄平だ。

イースタンでは好成績


6月1日の西武戦でプロ初登板初先発を果たした又木


 日本生命からドラフト5位で入団。春季キャンプの実戦、オープン戦で好投を続け、新人の中で存在感が際立っていたが、シーズンに入るとプロの厳しさを味わった。3試合登板で0勝1敗、防御率6.10。プロ初登板となった6月1日の西武戦(ベルーナ)は6回2安打無失点。ただ6四球と制球に苦しみ、合格点をつけられない内容だった。6月23日のヤクルト戦(東京ドーム)は4回途中5安打2失点で降板。その後はファームで調整し、8月9日の中日戦(バンテリン)で3度目の先発のチャンスが与えられたが。1回4安打5失点KO。細川成也に3ラン、木下拓哉に2ランを浴び、わずか28球でマウンドを降りた。

 登録抹消され、投球フォームを見つめ直した。たどりついたのはリリースを下げた新しい投球スタイルだった。イースタン・リーグでは20登板で5勝3敗、防御率2.07の好成績を残している。巨人を取材するスポーツ紙記者は、「一軍では四球を出してピンチを迎える場面が多く見られたが、ファームの試合を見れば分かるように制球が悪い投手ではない。技術面で修正点がありますが、本来の力を発揮できなかったのは精神的な部分もあると思います。一つひとつの球種は質が高いので、一軍で一つ勝てばガラリと変わる可能性があります」と期待を込める。

前年4試合登板からジャンプアップ


プレミア12の豪州戦で先発し好投した井上


 殻を破れば、大きく飛躍できる。身近にその手本がいる。井上だ。昨年は4試合登板で0勝1敗、防御率10.95。9月3日のDeNA戦(横浜)では1回6安打7失点とメッタ打ちを食らった。イースタン・リーグでは10試合登板し、7勝0敗、防御率0.74と格の違いを見せて最多奪三振(84)のタイトルを獲得したが、プロは一軍で結果を出してナンボの世界だ。今季も交流戦前までは主に救援登板で0勝3敗2ホールド、防御率5.19と安定感を欠いていたが、5月30日のソフトバンク戦(東京ドーム)で4回無安打無失点と走者を一人も出さない完ぺきな投球で今季初白星を挙げてから、投球内容がガラッと変わった。先発に配置転嫁された6月以降は7勝2敗の好成績をマーク。相手の懐に直球を投げ込む投球スタイルで101回を投げ、99三振を奪った。

 井上の活躍は、又木がプロの世界で輝く上で道標になっただろう。来年に向けての戦いはすでに始まっている。現在はプエルトリコで開催されているウィンター・リーグに派遣され、12月下旬まで参加する。技術面だけでなく精神的にもたくましくなり、先発ローテーションの座を狙う。

写真=BBM
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