大一番で先制打

1回裏一死二、三塁から四番・小野が中前への先制2点適時打。準決勝まで8打数無安打と結果が出ていなかったが、決勝で大仕事をした[写真=田中慎一郎]
11月25日 神宮
【第55回記念明治神宮野球大会】
▼決勝(高校の部)
横浜高4-3
広島商高
第55回記念明治神宮野球大会の高校の部の決勝が11月25日に行われ、横浜高(関東地区/神奈川)が27年ぶり2度目の優勝を遂げた。新チーム結成時から「15連勝」を目指したチームは有言実行。県大会、関東大会で頂点に立ち、今大会で「秋日本一」を達成。平成の怪物・
松坂大輔(元
西武ほか)を擁した1997年秋以来、神宮の杜で歓喜に沸いた。
大一番で先制打を放ったのは1年生四番・小野舜友だった。1回裏二死二、三塁からの中前適時打で2人の走者が生還した。試合の主導権を握る一打は、今大会10打席目にして初安打だった。今夏は三番。秋の新チーム以降、3年生・椎木卿五から主砲の座を受け継いだ。
「来た球を打つだけ。プレッシャーとかは感じずに、四番だからと言って、特にない。感じない何かがあったとすれば、本来の四番ではありません。チャンスで回せば、絶対に返してくれると、信頼のある四番になりたい」
東洋大姫路高との準決勝から中1日。練習拠点である長浜グラウンドで、打撃を修正した。
「打ちたいという思いが強すぎて、構えから自分の形が崩れていた。コーチからの指導でトップの作り方から、一つひとつの動作を確認した。やっと、一本が出て良かったです」
小野のほか、決勝では150キロ右腕・織田翔希、遊撃手の池田聖摩と3人の1年生が先発オーダーに名を連ねた。小野は今夏の神奈川大会で2試合に先発し、最速140キロ左腕としての立場もある。今秋は腰を痛めた影響で野手に専念したが「来年に向けては、ピッチャーをやりたい。奥村さん(頼人、2年)、織田に次ぐもう1枚に加わることができれば、チームとても大きいと思う」と意欲を示す。
同級生の織田は今大会、明徳義塾高との初戦(2回戦)を9回完封(2対0)すると、東洋大姫路高との準決勝では、2番手で4回1失点。広島商高との決勝では9回途中3失点で、最後は左腕エース・奥村頼が締めた。織田を援護したい思いが、空回りした感もある。
「毎回、ゼロに抑えてくれれば最高ですが、そんなピッチャーはいません。何点取られようと、バットで打ち返す。織田にも頼ってもらえるような存在になりたい。将来的には、織田が投げないときは、自分が投げる。後ろに織田が控えていれば、安心感がある。自分も逆にそう思われる投手を目指したい。(織田は)ライバルではありますが、自分と織田、1年生2人が先輩を勝たせたいと思います」
左打者では筒香嘉智が理想像

広島商高の猛追を振り切り、1点差で27年ぶり2度目の優勝。背番号3・小野も歓喜の輪に加わった[写真=矢野寿明]
愛知県出身。小学6年時には
中日Jr.でプレーし、中学時代に在籍した東海中央ボーイズでは全国大会優勝を経験。「村田(浩明)監督が熱くて、自分たちのことを最優先に考えてくれる。村田監督の下で野球をやりたい」と、神奈川で白球を追う決意を固めた。入学から約8カ月。名門校でプレーする重みがある。
「伝統のある高校に入って、レベルの高さを感じ、求められるものも高くなる。ただ、過去の実績を追い越していかないと、新たな伝統は作れない。自分たちが作っていきたい」
27年ぶりに明治神宮大会を制しても、浮かれる様子はまったく見られない。
「明治神宮大会は終わり、(来年1月の選出が有力視される)センバツに向けて取り組んでいく期間に入る。もう2ランク、3ランクレベルアップしないといけない。今すぐ、センバツに向けて切り替えて、チームとしてやるべきことを明確にしていく」
投手で好きなタイプは横浜高の3学年上の先輩・
杉山遙希(西武)。ほかにはカブス・
今永昇太、
オリックス・
宮城大弥、中日・
大野雄大にあこがれる。左打者では横浜高のレジェンドである
DeNA・
筒香嘉智が理想像だ。
「まだまだ、手に届くような存在でもありませんが、努力していきたい。チームを勝たせる1本。任された場面で、仕事をしたいです」
村田監督は学年に関係なく、あくまでも実力主義でレギュラーを決める方針がある。小野の発言の一つひとつからは、とても1年生とは思えない覚悟と責任を感じた。指揮官が名門・横浜高校打線の「顔」となる、四番を託したくなる気持ちも、十分に理解できた。
文=岡本朋祐