なかなか状態が上がらず

今季も打撃で納得のいく成績を残せなかった山田
この選手が復活しなければ、
ヤクルトのV奪回は望めない。2021年から就任した主将を来年も務めることが決まった
山田哲人だ。
今年は3月29日の開幕・
中日戦(神宮)で下半身を痛めて戦線離脱。出端をくじかれる形となり、一軍復帰後もなかなか状態が上がってこなかった。コンディションが万全でないのだろう。途中交代する試合が多く、110試合出場で打率.226、14本塁打、39打点。スピードが武器の選手だが、わずか1盗塁に終わった。
全盛期の姿を追いかけてしまうのは、強烈な輝きを放っていたからにほかならない。高卒4年目の14年に打率.324、29本塁打、89打点で最多安打(193本)のタイトルを獲得すると、15、16、18年と3度のトリプルスリーを達成。プロ野球の歴史を紐解いても、トリプルスリーを2度達成した選手は1人もいない。前人未到の領域に3度到達した山田は異次元だ。昨年に
阪神を38年ぶりの日本一に導き、今年限りで勇退が決まった
岡田彰布元監督は、かつて週刊ベースボールのコラムで山田のすごみについて語っている。
「このトリプルスリーは、いろいろな条件をクリアして成し遂げられるものやろな。まず完全にレギュラーに定着すること。試合に出たり、出なかったりでは達成できない。それに故障をしないというのも条件に入るやろ。大きな故障をすれば、数字は伸びない。だから丈夫で故障に強いことが求められるわけよ。そして何より秀でているものが3つもあるということや。プロに入って試合に出るには、まず一芸に秀でていることが、手っ取り早いんやが、大きいのが打てて、確実性があって、足が速い。これがそろってないとトリプルスリーは無理よ。ということは三芸に秀でているってことになる。こういう選手がいてくれたら、そら監督としては、頼もしいわ」
「山田については、以前にも書いたけど、
オリックスでオレが(ドラフト1位でヤクルトと競合して)クジで負けて逃がした選手よ。体はそう大きくないけど、体の強さ、それにタイミングの取り方がうまいし、それがホームラン量産につながっている。これは本人の努力と球団の方針の賜物やと思うな。ヤクルトの関係者に聞いたけど、入団して二軍でみっちりと鍛えたという話や。素晴らしい資質を、二軍で伸ばし、そして機が熟したところで、一軍で花を咲かせる。これは柳田(悠岐)も同様やったと思うな。
広島には出て、阪神、
巨人に出ていないトリプルスリー。一芸に秀でてレギュラーになれるプロの世界で三芸に秀でている山田と柳田はすごいわ。トリプルスリーはタイトル獲得より価値があると思うわ」
落ちていないパワー
球史に名を刻む活躍を見せていたが、近年は度重なる故障の影響で本来のパフォーマンスを発揮できていない。22年以降は3年連続で打率が2割5分を下回り、盗塁数も激減。今季は球団史上最長の11年連続2ケタ本塁打を記録したが、満足できる数字ではない。チームも2年連続5位に低迷。最下位を免れるので精いっぱいだった。
トリプルスリーは過去に10選手が達成しているが、その後は盗塁を減らして長打力に磨きをかけるケースが多い。山田と共に15年にトリプルスリーを達成した柳田は、2ケタ盗塁に到達したシーズンが19年以降ないが、4年連続20本塁打をマークするなど打線の中軸で活躍している。
スポーツ紙記者は「山田はスタンドに軽々超える打球を打てるし、パワーは落ちていない。盗塁は下半身に大きな負荷が掛かり、32歳という年齢を考えると故障のリスクが高まります。打率2割8分、30本塁打をクリアできれば、盗塁ができなくてもチームに十分貢献できる。スピードを武器に勝負してきた選手なので葛藤があるかもしれませんが、選手寿命を延ばす観点でも、パワーヒッターにモデルチェンジする時期に来ていると思います」と指摘する。
来季が7年契約の5年目。球団のレジェンドだった
青木宣親が現役引退し、精神的支柱としても頼りにされる。再びグラウンドで輝けるか。このままでは終われない。
写真=BBM