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一軍で10試合登板のみも…巨人移籍で大化け期待される「本格派右腕」は

 

ポテンシャルを秘める右腕


オフに行われた現役ドラフトで日本ハムから巨人へ移籍した田中


 巨人は戸郷翔征山崎伊織井上温大と生え抜きの若手たちが先発の核になっている。現場の育成手腕が評価される中、スケールの大きい右腕が加入してきた。現役ドラフトで日本ハムから獲得した田中瑛斗だ。

 高卒7年目の昨年は3試合登板のみ。通算でも一軍登板は10試合にとどまっているが、投げる球は目を見張るものがある。184cmの長身から投げ下ろす150キロ前後の直球は球威十分でスライダー、フォーク、チェンジアップ、カーブ、カットボール、シュートと多彩な変化球を操る。新人のときから指導していた日本ハムの加藤武治二軍投手コーチ(現一軍投手コーチ)は「体力が付いたときの将来像は僕には見えない。とんでもない投手になるかもしれない」と素質に太鼓判を押し、「持っているポテンシャルは、ナオ(上沢直之)以上かもしれない」と大きな可能性を口にしていた。

 順風満帆な道のりだったわけではない。高卒2年目の2019年シーズン終盤から右肘に痛みを感じて、20年の3年目に手術。21年に実戦復帰したがイースタン・リーグで0勝5敗、防御率9.64と結果を残せず、オフに育成契約となった。だが、ここからはい上がる。22年7月1日に支配下に復帰し、7日のロッテ戦(ZOZOマリン)で6回4安打1失点に抑えてプロ初先発初勝利をマーク。「この景色を見たくてプロ野球を頑張ってきていた」とお立ち台で、目を輝かせた。

 その後は右肩痛で苦しんだ時期があったが、現在はコンディションに問題がない。昨年は一軍で力を発揮できなかったが、イースタン・リーグで29試合登板して5勝2敗1セーブ、防御率2.35の好成績を残している。

 田中は憧れていた投手がいる。19年に週刊ベースボールの取材で以下のように語っている。

「先発でも中継ぎでも抑えでも、チームに必要とされるポジションでフル回転できるようにしたいです。あこがれは高校の先輩である巨人の山口俊さんです。地元が一緒で、柳ケ浦高に行ってプロになりたいと思ったのも山口さんがいたからです。先発投手としても、抑え投手としても、活躍できるのはすごいですし、僕もそんな投手になれるように頑張りたいです」

巨人でタイトル獲得した山口


2019年、巨人で最多勝、最高勝率に輝き優勝に貢献した山口


 山口はDeNA、巨人、ブルージェイズの3球団でプレーし、日米通算68勝112セーブをマーク。FA移籍した巨人では19年に15勝4敗、防御率2.91で最多勝、最高勝率(.789)、最多奪三振(188)のタイトルを獲得して5年ぶりのリーグ優勝に大きく貢献した。当時をこう振り返っている。

「DeNA最終年の16年の感覚に近かったですね。こうしたいと思ったら全部できる感覚でした。例えばフォームがしっくりこないな、じゃあこうしようと思ったらうまくハマる。シーズン中も、ほかの選手の投球動画をランダムで見て『このカーブすごいなあ、どういうふうに投げているんだろう』ってマネしたら思いどおりに投げられて。打たれても明確に原因が分かるから修正できました。肩や肘が痛いときはどうしてもかばいますからね。自分のイメージしたとおりに投げているつもりでも、体が痛みに反応して映像を見ると全然違うフォームになっている。16年の最後に肩をケガして、完全な状態に戻るのに2年かかりました」

 山口は先発、救援で活躍したが、田中も与えられた役割で結果を出すことで未来が切り拓かれる。99年生まれの同学年では大勢が巨人の守護神として入団時から活躍しているだけに、大きな刺激になるだろう。現役ドラフトで移籍した投手の中では大竹耕太郎(阪神)が大ブレークし、昨年は鈴木博志(オリックス)、佐々木千隼(DeNA)、漆原大晟(阪神)がセットアッパーで奮闘した。田中も巨人で活躍することが、育ててくれた日本ハムへの恩返しとなる。本格派右腕の覚醒が待たれる。

写真=BBM
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