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石田雄太の閃球眼

石田雄太コラム「重荷を背負って期待に応えたホームランの価値」

 

王貞治が現役を退いた1980年。11月16日に熊本・藤崎台球場で行われた阪神との秋のオープン戦は、報道陣の多さからも分かる異例の注目度となった中で“1032本目”のアーチをかけた[写真=BBM]


“その後”に放った2本のホームラン


 このコラムが連載1000回を迎えたとき、次に節目と言うべき数字があるとしたら“1032回目”だと意味深なことを書いた。そして、その数字の言わんとするところが分かる野球好きがいるとしたらかなりの達人だと、つい挑発してしまったら、ずいぶんたくさんの達人から連絡をいただいた。この国の野球好きを舐めてはいけないとあらためて思い知らされた。

 そう……“1032”とは王貞治の通算ホームラン数である。

 いやいや、王のホームランは868本だろうと仰る野球好き、その数字がすぐに出てくるだけで十分な野球好きだ。その場合の王が現役最後に打ったホームランは1980年10月12日、後楽園球場で打ったその年の30号、通算868号ということになる。このホームランは19年連続30号というとてつもない記録であり、この時点で王はまだ現役引退を発表していない。つまりこの“868”本目のホームランが後々まで語り継がれる意味のある数字になるとは誰も思っていなかった。

 しかし、1980年11月4日、王が現役引退を発表する。まさかの一報は当時の野球好きにとっては寝耳に水だった。もう王のホームランはこの目で見ることができないのかと、決して大袈裟でなく日本中が悲嘆に暮れた。

 ただ・・・

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石田雄太の閃球眼

石田雄太の閃球眼

ベースボールライター。1964年生まれ。名古屋市立菊里高等学校、青山学院大卒。NHKディレクターを経て独立。フリーランスの野球記者として綴った著書に『イチロー・インタビューズ激闘の軌跡2000-2019』『大谷翔平 野球翔年』『平成野球30年の30人』などがある。

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