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【MLB】メジャーの勝利の方程式は変ったのか? スピードチームが躍進

 

けん制の制限やベース拡大を利用して、スモール・ベースボールのチームを目指す球団も増えてきた。ダイヤモンドバックスの新人、キャロルは足を生かし、地区首位の快進撃を見せるチームをけん引している


 今季からのルール変更で、メジャーの勝利の方程式は変わったのかもしれない。昨季ナ・リーグ西地区4位だったダイヤモンドバックスと同中地区最下位タイのレッズが大躍進を遂げ、それぞれの地区で首位に立っている(現地時間6月29日現在)。

 MLBはゲームの中でのアクションを増やそうと、けん制球の回数を制限し、ベースを大きくしたのだが、両チームにスピード自慢のスーパースターが誕生、チームをけん引している。ダイヤモンドバックスはコービン・キャロルで打率.292、17本塁打、44打点、盗塁も23回試みて21回成功している。ナ・リーグ新人王の最有力候補で、MVPレースでもブレーブスのロナルド・アクーニャ・ジュニアに挑戦する存在だ。

 196cm、90kgと巨漢のレッズのエリー・デラクルスは6月6日にメジャー・デビューしたばかりだが、パワーとスピードで度肝を抜く。デビュー戦で打球速度112マイルの二塁打をかっ飛ばしたかと思えば、第2戦は458フィートの特大のホームランと今季メジャー最速の30.7フィート/秒で三塁打をマークした。

 まだ1カ月も経たないため、成績は打率.301、3本塁打、11打点、9盗塁だが、彼が戦列に加わってからレッズは16勝5敗の快進撃である。両チームはルール変更が決まる数年前から、ドラフトなどでスピードが武器の選手をかき集めてきた。

 ダイヤモンドバックスのトーリ・ロブロ監督は「アスリートが増えてきたところで、このルール改正があって、われわれは良い位置にいると思った」と言う。キャロル以外にも走れる選手がいて、春のキャンプから、ベースランニングの練習に熱心に取り組んだ。おかげで塁に出ればホームへの生還率は35%とナ・リーグで一番高い。

 チーム盗塁数は81個と全体3位で、成功率は87%とトップだ。一方で、相手の盗塁成功率は67%と最も低く抑えている。ロブロ監督は「スモール・ベースボールの重要性はずっと話し合ってきた。何度も練習し、リハーサルを重ねてきた」と説明する。

 レッズのニック・クロールGMは「2020年にプレーオフに出たチームは良い先発投手がいて、パワーヒッターのバットで勝てたけど、守備面など弱点もあった。そこでチーム作りの方針をあらためた」と言う。

 MLB公式サイトは6月27日、レッズの選手のスプリントスピードの平均は28フィート/秒で30球団中トップだと報じている。デラクルス以外にも5月に昇格したマシュー・マクレーン遊撃手、昨季ウエーバーで獲得したスチュアート・フェアチャイルド外野手らが快足を飛ばす。

 昨季のレッズは盗塁数が下から6番目の58盗塁だったが、今季は一転92盗塁で2位である。急に変わったのは選手を大幅に入れ替え、若返りしたからだ。4月、5月は借金生活だったが、6月になって歯車がかみ合うようになり、勝ち始めた。

 もっとも両軍とも最後までペナントレースで戦い続けられるかどうかは定かではない。ダイヤモンドバックスの投手陣の防御率は4.40でメジャー19位、レッズは5.01で27位とピッチャーが良くないからだ。とはいえ、ここまでのところ地元ファンはスピードで攻撃力を増した若いチームを熱狂的に応援している。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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メジャーから発信! プロフェッショナル・アイデアの考察[文=奥田秀樹]

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