ボラス代理人によれば、藤浪はメジャーで成功するための勉強をしているところで、必ず昇格し成功するという。その言葉を信じて待つのみだ
今季メッツ傘下、3Aシラキュース・メッツで投げる
藤浪晋太郎投手だが、現地時間5月7日現在9試合7回2/3を投げ、9三振、7安打、17四球、2死球、防御率14.09、WHIP3.13と厳しい成績だ。メジャー球団のメッツのブルペンの防御率は2.84と好調で、これでは到底声がかからない。
藤浪の代理人を務めるスコット・ボラス氏は、5月6日ドジャー・スタジアムで取材に応じ、「今、彼はこれまでなかったような環境で投げている。本当に寒い。だから四球も多くなる。でもそのうち制球力を取り戻す。ピッチングのリズムが戻ってくれば去年の良いときのように投げられる。彼はメジャーレベルの球威を持っている」と励ましていた。
昨季6月は防御率3.97、7月は3.14で、7月下旬に最下位のアスレチックスから優勝を争っていたオリオールズにトレードされた。今季メッツも335万ドルの年俸を払ったからには、辛抱強く、調子が上がるのを待つのだろう。
制球に苦しむ藤浪を見ていると、
菊池雄星投手(ブルージェイズ)のことを思い出さずにおれない。菊池も2019年にメジャー・デビューを果たしたが、1年目は防御率5.46、2年目は5.17と苦しんだ。3年目は前半は好調でオールスターに選ばれたが、後半崩れ、終わってみれば7勝9敗、防御率4.41だった。
マリナーズは4年総額6600万ドルの契約延長のオプションを持っていたが、行使しなかった。だが菊池の代理人も務めるボラス氏は、当時から、菊池はやれると断言していた。
「左の先発投手で安定して97マイルを投げられる投手はそうそういない。オールスターにも選ばれた。彼を欲しい球団は少なからずある」
実際ブルージェイズと3年総額3600万ドルの契約を結び、1年目は苦しんだが、2年目に2ケタ勝利、防御率3.86と好成績。今季は5月14日現在8試合に投げて防御率2.64とエリートレベルである。ボラス氏は「雄星はMLBについて学ぼうという意識が旺盛だった。打者を知り、状況に応じて、どういった配球をすべきか学んだ。日本では打者を圧倒していたから、セットポジションで投げるのは少なかったが、こっちではセットで投げることが多い。それについてもアジャストした。直球の動きに磨きをかけ、リリースポイントが安定し、制球力もついた。われわれは彼にたくさんの情報を手渡したが、それもしっかり吸収した。加えて彼の英語力は向上し通訳が必要ないレベルになった。それも成功の大きな要素になっている」と説明した。
驚くべきは1年目は36本も被弾したのに、今年はたったの2本である。平均95.5マイルのフォーシームで押し、83マイルのカーブ、89マイルのスライダーで空振りを奪う。果たして藤浪も菊池のようにメジャーで成長できるのか。
ボラス代理人は「藤浪もとても頭の良い選手。アスレチックスの入団会見の英語を覚えているだろう。チームメートとも良い関係を築ける。私たちが与える情報も理解できる。体の状態も良い。あの肩ならやれる」。辛抱強く見守るだけなのだ。
文=奥田秀樹 写真=Getty Images