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【MLB】ドジャースの最大の脅威フィリーズ 優勝請負人の手腕に注目

 

今季ここまでMLB最高勝率を挙げているフィリーズ。そのトップを任されているドンブロウスキー編成本部長は、世界一に向けて虎視眈々と次の手を考えながらチーム運営を行っている


 世界一を目指すドジャースにとって、フィリーズが一番の脅威になっている。7月9日、ドジャースを10対1と一方的に下し59勝32敗、勝率.648はMLBトップ。球団記録となる7人の選手をオールスター・ゲームに送り込む。投手陣の防御率3.24は30球団で1位、攻撃陣のOPSは.752で全体5位である。

 先発投手陣はケガ人続出のドジャースと違い、オールスター選出のザック・ウィーラー、レンジャー・スアレスはじめ、4人が開幕から先発ローテーションを守り投げ続けている。ブルペンもオールスター選出のジェフ・ホフマン、マット・ストラームが防御率1点台。野手では大谷翔平とナ・リーグMVPを争うブライス・ハーパーが20本塁打、OPS.968。二番のトレイ・ターナーも左太もも裏を痛め離脱していたが、6月17日の復帰後は絶好調、ドジャース戦では満塁本塁打を放った。

 アレク・ボームは70打点を挙げメジャー5年目で最高のシーズンとなっている。フィリーズと言えばパワーヒッターを並べるイメージだが、今年のチームはスピードを使い細かい野球もできる。ブライソン・ストット、ヨハン・ロハスなど5人が2ケタ盗塁でチームトータルは95個、全体4位だ。

 賞賛されるべきは67歳の編成本部長デーブ・ドンブロウスキーの手腕だろう。優勝請負人と呼ばれ、これまでマーリンズ、タイガース、レッドソックスをワールド・シリーズに導いてきたが、巧みに層の厚いチームをつくる。

 J.T.リアルミュートが膝の手術を受け離脱したが、彼が抜けた後も控え捕手が攻守にきっちり仕事をして14勝12敗と勝ち越している。ドンブロウスキーは18年にレッドソックスを世界一に導いたが、19年の9月に解雇された。勝つためにファームの若手有望株を次々にトレードに出し、そのやり方では成功を長く持続させられないとオーナーに決めつけられたからだ。

 だが20年12月にフィリーズに雇われてからは、若手有望株をキープしながらチームを強くした。スアレス、ボーム、ストット、ロハスは生え抜きである。今、注目は7月30日のトレードデッドラインまでにどんな補強をするかだ。ドジャースはトップクラスの先発投手を取りに行きそうだが、フィリーズには大物は必要ない。

 ドンブロウスキーは最近、担当記者に「小さなことがチームをより良くする。そこにフォーカスしている」と明かした。18年のレッドソックスではスティーブ・ピアースを獲得した。通算打率は.254、91本塁打のロールプレーヤーで大きなニュースにならなかったが、チーム加入後はチャンスに強い打撃で活躍し、打線に厚みを持たせた。そしてドジャース相手のワールド・シリーズでは3本塁打、8打点の大暴れでシリーズMVPに選ばれている。

 1997年のマーリンズでは現カブス監督のクレイグ・カウンセルを獲得。非力な二塁手で、メジャーで4試合しかプレーしていなかったが、スター軍団のマーリンズに加えた。ワールド・シリーズ第7戦で延長戦に持ち込む犠牲フライを放ち、11回に決勝のホームを踏んだ。ドンブロウスキーが今月、どんな補強をするかとても興味深い。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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メジャーから発信! プロフェッショナル・アイデアの考察[文=奥田秀樹]

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