メジャー挑戦前の最終登板となったクライマックスシリーズ・ファーストステージ第1戦で佐々木朗希は8回9奪三振無失点の好投。11月9日にポスティングでのメジャー挑戦を表明した。MLB公式サイトはFA市場全体3位と佐々木を評価している。23歳の今後の動向に注目だ
佐々木朗希は23歳という年齢のため、メジャー移籍に際しては「25歳ルール」の対象になり、
山本由伸や
今永昇太のような「外国プロ選手」ではなく、「国際アマチュア選手」と同じ扱いになる。
大谷翔平が2017年にエンゼルスと契約したときと同じだ。1月15日〜12月15日の25年度枠で移籍すると見られるが、大谷のころは年をまたぎ、年度は7月2日から翌年の6月15日までだった。その年の球団ごとに割り振られたボーナスプールは475〜575万ドルだった。17年7月2日、レイズは16歳のドミニカ共和国出身の遊撃手ワンダー・
フランコと382万5000ドルで契約、その年度の最高額だった。マリナーズも22年新人王のフリオ・
ロドリゲスと175万ドルで合意。大谷は半年遅れて231万5000ドルでサインした。
毎年世界中から約6000人が登録され、契約するのは約600人。オールスターに4度出場した26歳のフアン・ソトは15年7月に150万ドルでナショナルズ入り、今季67個で盗塁王を獲得したエリー・
デラクルーズは18年7月に6万5000ドルでレッズに。新人王候補の
ジャクソン・チョーリオは21年1月15日に190万ドルでブリュワーズと契約した。
錚々たる顔ぶれを見れば分かるように、アメリカ・カナダのアマチュアドラフトに匹敵するとても重要なイベント。人材の宝庫はドミニカ共和国とベネズエラでMLB公式サイトが発表した25年のトップ50有望株ランキングでも、29人がドミニカ共和国、14人がベネズエラ、3人がキューバ出身だった。25年のボーナスプールは626万1600〜755万5500ドルである。
国際アマチュア選手の獲得はドラフトとは異なり自由競争。ゆえに争奪戦はとても激しくなり、それに伴い厳格なルールも定められている。まず、球団は自チームに割り当てられたボーナスプールを超えて支出できない。最初からメジャー契約を結ぶことも許されない。佐々木をどうしても獲得したい球団が追加資金を提供しようと試みても、MLBはそのような抜け道を一切許さない。実際、過去にはブレーブスのジョン・コッポレラGMが不正を働いたため、17年に永久追放処分を受けている。さらに開幕ロースター入りを約束してはいけない。選手がチームに加入した後に、別のマイナー契約やメジャー契約に変更する約束も禁じられている。
MLB公式サイトは先日、このオフのメジャーのFA市場全体でのトップ25選手を発表。1位には6億ドルの大型契約が予想されるソト、2位には2億ドル超のコービン・バーンズがランクインした。佐々木は彼らに次ぐ3位。多くのMLB関係者は彼の市場価値を1億5000万ドル以上と見ている。
このような価値の高い選手を、国際アマチュア枠により、わずか500万ドル前後の契約金で獲得し、さらに6年間の保有権も手に入れられる。この絶好のチャンスを見逃すようなチームがあれば、「強くなる気がない」とファンに批判されても仕方ないだろう。ドジャースが獲得最有力候補とされているが、果たしてどうなるのか。おそらく、大谷のときのように途中で球団を絞り込み、直接面談を行っていくのだろう。今後の動向に注目が集まる。
文=奥田秀樹 写真=高原由佳