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オープン戦レポート

ロッテ 田中英祐 注目度抜群のルーキーが本拠地でオープン戦初登板

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本拠地QVCマリンでオープン戦初登板を果たした田中



今季、ロッテで最も話題となっているのは、まだプロでの実績のない異色の秀才新人だ。オープン戦でついに本拠地デビューを果たしたロッテ・田中英祐。課題は残ったものの、まずは一つ目の階段を上がった。
文=吉見淳司 写真=松田杏子

悔しいデビュー


 12球団のルーキーでトップクラスの注目を浴びる右腕は、思わぬ形で本拠地のファンの前に姿を現した。3月11日、本拠地・QVCマリンで行われた中日戦で、ロッテ・田中英祐はリリーフカーに乗ってマウンドへと向かった。

 京大では絶対的なエースとして、同大学史上最多のリーグ戦8勝をマークしたスターター。この日も当初は先発予定だったが、前日のDeNA戦(QVCマリン)が雨天中止となっており、その試合で先発するはずだった涌井秀章がスライド登板。急きょ6回からのマウンドへと変更になった。

オープン戦初登板は先発ではなくリリーフ。6回表にリリーフカーに乗ってマウンドへ



 この起用が現在の田中の立場を物語っている。伊東勤監督は3月1日時点で「開幕ローテーションの6人が決まった」と発言。田中はそれまでに練習試合1試合(2月22日対広島、コザ)にしか登板しておらず、さらに4日からは卒論のために一時的にチームを離れなくてはならなかった。つまり、その時点で開幕一軍入りはほぼなくなっていたのだ。

 それでも一縷の望みを懸けて、田中は自身初のオープン戦に臨んだ。

 先頭の井領雅貴を左飛に、続く藤井淳志をキレのあるスライダーで空振り三振に仕留める順調な立ち上がり。亀澤恭平には四球を与えたものの、森野将彦を右飛に打ち取り、順調な立ち上がりを見せた。

 だが、7回に入ると一変。QVCマリン特有の強風にバランスを崩され、先頭の福田永将から3連打を浴びて無死満塁とされる。高橋周平に押し出し四球。野本圭に左犠飛を許し、2対3と逆転された。後続は凡退させたものの、2回を投げて3安打2四球2奪三振2失点のほろ苦いデビュー。一軍生き残りを懸けた強い思いも、プロの壁にはね返されてしまった。「風が向かってくるので変化球の曲がりが大きく、ストレートの制球も難しかった。悔しい部分が多い」

 万全のグラウンドコンディションとは言えなかったが、本拠地では対応が求められるところで、経験不足が露呈してしまった内容だった。

 伊東監督は「強風で大変だったと思う。またチャンスを与えたい」と18日のソフトバンク戦(ヤフオクドーム)で最終テストの場を与えることを明かした。
※3/18のソフトバンク戦に先発登板。4回を投げて4安打2奪三振1四球3失点だった。

QVCマリン特有の向かい風に苦しんだが、直球は最速145キロをマーク。伊東監督に次回登板を約束させる力はあった



本領発揮はこれから


 新人合同自主トレや春季キャンプでは京大卒というプロ野球史上初の経歴が話題を集めることが多かった。しかし、シート打撃、練習試合ではしっかりと結果を残し続け、投手としての実力で注目に応えてきた。

 これまで野球有力校でプレーした経験はなく、育成には時間がかかると見られていた。だが、ロッテの一員として日々を過ごす中で、首脳陣の評価が上方修正されたことは間違いない。

 一時的にチームを離れていたとはいえ、オープン戦終盤まで一軍帯同を続けているのも、戦力として計算されているからにほかならない。「いつかは“京大の田中”ではなく、“ロッテの田中”として見てもらいたい。そのためにも結果を残したい」

 田中が持つ最大の武器は、その飽くなき探求心と向上心。これまで歩んできたように、自ら課題を明確にし、自分の力で道を切り拓いていくはずだ。

捕手・田村とマウンド上で作戦会議。この登板の反省を今後に生かすと誓う



PROFILE
たなか・えいすけ●右投右打。180㎝75㎏。1992年4月2日まれ。兵庫県出身。白陵高-京大-ロッテ15年2位

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