現地時間1月7日。広島からポスティングシステムでメジャー入りを希望した前田健太が、ドジャースと正式契約を果たし記者会見が行われた。夢が実現した前田は笑顔を見せたが、一方で、身体検査(フィジカル)でイレギュラーな部分が見つかり、交渉は難航した。その結果、8年契約総年俸2500万ドル(約30億円)+出来高8120万ドル(約97億円)という珍しい契約に。その内容にたどりついた真相とは―― 1ドル=120円換算 文=奥田秀樹、写真=Getty Images 夢が消えそうになるまさかの現実に直面
「マイ・ネーム・イズ・ケンタ・マエダ。広島東洋カープから来ました」 前田健太の第一声は英語。真新しい18番のユニフォームを着て笑顔が広がった。とはいえ、この1カ月間は喜びよりも苦悩の日々だった。「一部報道にあったとおり、身体検査にイレギュラーな点がありました」と日本語に換え、続ける。
2015年15勝8敗。防御率2.09、沢村賞受賞。ウインターミーティングで、5年6000万ドルと見積もられた契約相場が白紙に戻ったのは、フィジカルという日米間の契約プロセスの違いによるモノだった。
MLBでは高額の複数年契約が珍しくなく、球団側は医師によるフィジカル検査を徹底して行っている。選手側も、その診断結果に納得できない場合、ほかの専門医からセカンドオピニオン、サードオピニオンをもらう権利が認められている。だが、日本の現状の契約状況は、基本単年で金額もさほど大きくはない。ましてや前田のように大活躍した選手の身体をあれこれ調べたりはしない。
だがMLB、特にポスティングフィー込みで8000万ドル級の買い物となると話は別だ。渡米後すぐに、ロサンゼルスのケーランジョーブ・クリニックで受けた検査の結果、ヒジに問題ありと分かった。
身体検査通達後、フリードマン社長(写真右)をはじめドジャース側は交渉を見送ろうとしたが、違う形で前田とのお互いのWIN&WINを探っていった
前田はブログで「メジャー・リーグに挑戦することができないんじゃないかと思うこともありました」と当時の心境を明かしている。前田に興味を示したドジャースのアンドリュー・フリードマン社長もこの日の会見で「代理人に伝えられ、直後は違う方向に動いた」と一時撤退を認めた。
日本人投手の相次ぐヒジの手術と前田の契約
ドジャース入りが決まり、自信はあると語った前田。1988年以来の世界一へ向け腕を振っていく決意を会見で見せた(左からケースティンCEO、ザイディGM、ロバーツ新監督、前田、フリードマン社長)
近年日本人メジャー投手、
松坂大輔、
ダルビッシュ有、
田中将大など、ポスティングで1億ドル超の価値があると評価されてきた。技術が高く、能力に秀でているからだ。その結果、日本球団は移籍時に多額の譲渡金を手にしたが、その金額を選手たちの健康管理の面にどれくらい費やしただろうか? 近年日本人メジャー投手が相次いでトミー・ジョン手術に至ったことも影を落とす・・・
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