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明治魂に触れた取材

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 東京六大学野球連盟結成90周年シリーズの第1弾として『明治大学野球部』が5月21日(水)に発売となる。その取材を通して同野球部の歴史の一端に触れることができたのは、大学野球担当として貴重な経験となった。

 府中グラウンドでの取材は、早朝5時半過ぎからスタート。春季リーグ戦が行われる明治神宮野球場への『出陣式』にお邪魔した。グラウンドの右中間付近にある内海弘蔵像、島岡吉郎像への参拝はいかにも厳かで、近寄りがたい空気。撮影をカメラマンに任せ、思わずその場から退いてしまうほどだった。これが島岡監督時代から続く儀式なのだ。簡単に負けない、粘り強い明治の野球はプロセスにも起因しているのだと思うに至った。

 そして広澤克実氏と竹田光訓氏の同級生対談。こちらがセッティングした取材場所に広澤氏とともに訪れると、竹田氏はすでに到着済みで「久しぶり!」の一言をきっかけに、まさに堰を切ったかのように思い出話があふれ出てきた。話のほとんどは島岡御大に殴られたことや、厳しい上下関係の話。「御大の写真を見れば現役時代にタイムスリップできますよ。同時に鳥肌も立ちますけどね」と言って竹田氏は豪快に笑った。

 鹿取義隆氏もまた、島岡御大に殴られたエピソードを披露してくれた。「パンチを避けたつもりはないんですけど、オヤジ(島岡御大)はそう思ったらしくて。『避けやがったな!』と馬乗りになってボッコボコにされました(苦笑)」。その当時の話を、前の晩にも昔の仲間たちと『酒の肴』にしたそうだ。また、ブラジル遠征の際にはその『指導』が警察沙汰になったこともあり、自分にとって当たり前の光景が「よその国では通用しないんだ」と気付かされたという。

「今の時代では絶対にアウトですけどね」と3人は口をそろえる。体罰に厳しい目が向けられる現代では、教える側が罰せられるケースが後を絶たない。当然の話である。それでも、一連の壮絶なエピソードを話す3人は、いずれも幸せそうな表情をしていた。それを含めての『人間力野球』。体罰の是非をここで論じるつもりはないが、数十年後の彼らの笑顔が『答え』なのだと感じた。(富田)

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週刊ベースボール編集部による日替わりコラム。取材のこぼれ話も。

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