
春季東京大会で気迫あるスイングを披露した清宮。写真はセンバツ時
4月5日、センバツ出場した早実が春季東京大会2回戦に登場。中大付高を8対2で下して3回戦に進出した。
高校通算79本塁打の早実・
清宮幸太郎は5打数1安打と〝節目〟の一発こそ出なかったが、「入りは難しい。勝ち切れたのは良かった」と、主将として、チームの勝利を喜んだ。
しかし、打撃内容についてはテレビインタビューで「調子が良いとは言えない」と言った直後に「悪くはないです」と即座に修正し、弱みを見せない、いつもの清宮の姿があった。
ところが、記者による囲み取材が始まると「なかなか、上がってこない」と本音を口に。
「甘い球がいくつかあり、とらえられなかったのは自分のミス。チームとして選球眼を意識しているので、ストライクだけ打つことをやっていきたい」
技術的には振り出す前のグリップの位置がポイントだと語り、タイミングを模索中。好調時とセンバツのビデオを見比べて、研究を重ねているという。
とはいえ、この試合も高校生離れした驚愕の打球の連続で、スタンドを沸かせた。センバツ2回戦では高く上がった飛球に、東海大福岡高の右翼手が「ボールが小さく見えて、風船みたいに飛んだ」と目測を誤り落球。この日は初回、強烈なライナーが投手を襲う。中大付高の先発・足立岳(2年)の右大腿部に直撃した(記録は内野安打)。
「気づいたら当たっていた。ほかの選手とはスイングが違って、1球1球甘く行ったら打たれる。気迫、圧力がありました。ずっと集中していたので、疲れました……」
足立は右サイドハンド。早実がセンバツで対戦した東海大福岡高・
安田大将(3年)とほぼ同じ腕の位置であり、「前日、ビデオを見て研究しましたが、僕は球威がないので、シンカーや緩いボールを使いました」。序盤は清宮以外の各打者も、タイミングを外される場面が目立った。
清宮が打席に立つと、中大付高は極端なシフトを敷く。三塁手が遊撃方向へ寄り、遊撃手は二塁ベースのほぼ後方、二塁手は右翼近くまで下がり、深い守備位置を取る。第2打席は、明らかな右前打が二塁手正面へ。ただ、打球が速過ぎて二塁手がファンブルし、記録は失策となった。
足立は清宮の第3打席では四球を与え、4回途中4失点で降板。チームは2対5の8回裏、3失点でなおも二死満塁。ここで打者は清宮で一本が出れば、7点差以上の
コールドだったが、左腕・中村和喜の前に中飛に倒れた。コールドを免れた中大付高だったが、そのまま2対8で敗退。しかし、試合後、先発・足立は達成感ある顔で語った。
「秋はブロック予選1回戦負け。東京で一番弱いチームだと自覚して練習してきました。甲子園に出場した学校と9回まで戦えた。自信にもなりましたし、良い経験になった。うれしかったです(苦笑)」
敗北の中に収穫あり。「だいぶ、痛いです……」と右大腿部をさすりながらも、足立投手は足軽やかかに、神宮第二球場から引き揚げていった。
文=岡本朋祐 写真=BBM