
通算2000安打まで目前に迫っている中日・荒木
昨年まで21年の現役生活を送ったが、打者の勲章である打率3割をマークしたのはわずか1回。中日が2年ぶりの優勝を果たした2006年、ケガの影響もあり、112試合の出場に留まったが464打数で139安打をマーク。ただ、それも計算すれば0.2995。四捨五入しての3割だ。
5月29日現在、2000安打に残り8本に迫っている
荒木雅博。通算本塁打も33本だが、2000安打以上している打者では最低の数字だ。守備に特化し、
野村克也監督からも「自衛隊」と評されながら、2133安打を放った元
ヤクルトの
宮本慎也も荒木を上回る62本塁打を放っている。
二塁手で6度ゴールデン・グラブ賞を獲得した守備力、そして通算380盗塁をマークしている走力には定評があるが、打撃では特筆すべきものが少ない。それが、周囲の一致した評価でもあるだろう。元チームメートで2015年に2000安打へ到達した
和田一浩氏も荒木の打撃についてこう語る。
「能力はそれほど高くはありません。よく頑張って、ここまで来たなというのが正直なところです」
センスの塊ではない。だが、センスはあっても、成功するとは限らないのも、またプロ野球の世界だ。それでは荒木は何が優れていたのか。再び和田氏の言葉だ。
「こんな言い方は失礼ですけど、バッティングに関して50くらいの能力で100ことをやっている選手。ただ、100近くの能力があっても、50くらいしか出せない選手もいる。それは執着心を持ってやってきた結果。本当に、努力型の選手でしょう」
技術がないけど、伸びしろはあると信じています――今年40歳になるが、2、3年前、このように自身の打撃に関して語った言葉を目にしたことがある。まさに、荒木の執着心がここに表れているだろう。
文=小林光男 写真=小山真司