
フェンスに駆け上がった長田。身が軽い
プロ野球の歴史の中で、日付にこだわって「その日に何があったのか」紹介していく。今回は7月12日だ。
怪力と風貌から『ポパイ』のニックネームがあった
長田幸雄。山梨の吉田高からリッカーミシンを経て1961年大洋に入団した左投左打の外野手だ。
64年7月12日だった。川崎球場の
巨人戦でライトを守っていた長田の背後から何かが飛んできて、頭部をかすめた。なんとウイスキーの瓶だ。
「僕は巨人戦に強かったんで、よく小石とかは飛んできたんですが、さすがにこれはシャレにならんだろ」とカッとして振り向くと、大洋ファンが投げた男を指さしている。
そこからがすごい。長田は瓶を手に持ったまま外野フェンスをよじ登って、そのまま男を追いかけた。実は中学時代までスピードスケートをしていたという長田は、巨漢ながら足腰の強さにも自信があった。
長田は、「殴るつもりはなかったですよ。危ないだろと注意しようと思いまして」と振り返っていたが、その男は怖かったのだろう。一目散に逃げた。長田はその後、退場処分にはなったが、観客のほうが悪質とそれ以上の処分はなかった。
写真=BBM