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東洋大・高橋監督は今秋限りで勇退。12月15日の優勝祝賀会では100人以上の教え子たちが集まり、労をねぎらった(写真左は上武大・谷口監督、右は浦和学院高・森監督)
「人材育成」こそが、指導者の醍醐味である。今秋限りで46年に及ぶ監督生活に別れを告げた東洋大・高橋昭雄監督(69歳)の功績が詰まったパーティーであった。
東都大学リーグで春秋連覇を遂げた東洋大の優勝祝賀会が12月15日、東京都内のホテルで行われ、OB、球界、学校関係者など約500人が出席した。
東洋大からは
達川光男(元
広島)、
松沼博久(元
西武)、
松沼雅之(元西武)、
仁村徹(元
中日)、
桧山進次郎(元
阪神)、
清水隆行(元
巨人ほか)、
今岡誠(元阪神ほか)、
大野奨太(中日)、
清田育宏(
ロッテ)、
鈴木大地(ロッテ)、
藤岡貴裕(ロッテ)、
原樹理(
ヤクルト)など、40人超のプロ野球選手を輩出してきた。すべて高橋監督の教え子なら、東都大学リーグ優勝18度もすべて、名将が成し遂げた功績である。東洋大野球部イ
コール、高橋監督の足跡と言っても過言ではないのだ。
一方、プレーヤーだけではなく、アマチュア球界で活躍する名指導者を育成してきたことも、高橋監督のもう一つの功績として外すことはできない。
ここに、3ショットが実現した。浦和学院高・森士監督(上尾高−東洋大)は13年春のセンバツで頂点へ導くと、同年6月の大学選手権では上武大・谷口英規監督(浦和学院高−東洋大−東芝)が全日本大学選手権を制覇。高橋監督は全日本大学選手権4度、明治神宮大会2度と計6度の全国優勝を経験しているが、教え子たちの日本一を誰よりも喜んでいた。
OBが恩師のために、母校へ好選手を送り込む。東洋大には、この流れができている。高橋監督は高校生の“スカウト活動”にあまり積極的でなかったのも、信頼する教え子たちがバックアップしてくれるから。このほか、桐生第一高・福田治男監督、東洋大姫路高・藤田明彦監督がその代表例である。
監督生活46年の歳月はOB会の一枚岩、結束力を作り上げていた。
東洋大は伝統的にマネジャーにも有能な人材が多い。大学のマネジャーは野球部の窓口。マスコミサイドからすれば、電話応対からアンケート依頼、グラウンドと神宮での取材対応まで、申し分のない動きをしてくれる。指揮官の指導が行き届いている、何よりの証拠であった。卒業後も野球を続けられるのはほんの一部。マネジャーのほか、ベンチ入りメンバー25人に入れなかった部員も、立派な社会人として野球部を巣立っている。
祝賀会後、野球部OB約100人がパーティー会場に残った。高橋監督を中心にOBが取り囲んでの記念撮影。人は財なり――。慕われる指揮官の周辺には、教え子たちの笑顔。同じ釜の飯を食べた仲にしか分からないその空間が、非常に微笑ましかった。
祝賀会当日、次期監督として野球部OB会臨時役員会から推薦されたのは、杉本泰彦氏(前・西部ガス監督)である。高橋監督の愛弟子は日本通運、日本代表監督も歴任。今後、大学や所属企業など、各方面の調整を経て「新監督誕生」の運びとなるが、46年に及ぶ「高橋イズム」をどのように継承するのか、その手腕が注目されるところだ。
文=岡本朋祐 写真=高原由佳