子どものときにあこがれだった多田野から感じた野球への情熱
みなさん、こんにちは。元
DeNAの
林昌範です。連載企画5回目の今回は、日本ハムで先日、引退セレモニーを行った多田野数人投手について書かせていただきます。
多田野さんとは日本ハムで2009年から3年間、ともにプレーしました。実は子どものときにあこがれの存在でした。僕が中学3年のときに、同じ地元・千葉県の八千代松陰高でエースだったのが多田野さん。「松坂世代」ですごい投手がたくさんいましたが、テレビで県大会予選の多田野さんを見て、球が速いし、すごいと印象に強く残りました。そのときの記憶があるので初対面で挨拶した際は「あっ、多田野だ!」とファンのような気持ちでした。
本当に優しい人で相手の年齢関係なく、気を使って話しかけてくれる。3学年下の僕にもいろいろな話をしてくれて接しやすい方でした。ただ、マウンドに上がるとスイッチが入る。先発で打たれて降板した際はベンチ裏で大声を上げて悔しがっていました。野球への情熱がすごい。僕は中継ぎでしたが、その姿を見ていたので多田野さんが降板して救援した際は「絶対に抑える」という思いが一層強かったです。
多田野さんの代名詞になった「超スローボール」ですが、あの球を投げるのは非常に難しいです。山なりの緩やかな軌道が注目されますが、同じ投手として驚かされたのが制球力です。僕とキャッチボールした際にも超スローボールを投げるのですが、構えたグラブがほとんど動かずきっちりくるのです。球を置きにいかず、腕を振って遅球を投げる技術は非常に高度です。大きく外れるボール球になっても不思議でないし、この球を投げられない投手はたくさんいます。公式戦でも捕手のミットはほとんど動いていません。多田野さんのすごみが凝縮された球だと思います。
日本ハムを退団後はルートインBCリーグ・石川でプレーして、今年から日本ハムのチーム統轄本部プロスカウトに就任すると聞きました。人望が厚い多田野さんだからこそ、今回の引退セレモニーが開催されたと思います。最後に、3年間本当にお世話になりました。ありがとうございました。
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元DeNA・林昌範(写真=ココカラネクスト編集部)
記事提供=ココカラネクスト編集部 平尾類