
立正大・坂田監督(右)は社会人・シダックス時代、野村克也氏の指導を受けた。かねてよりつながりのある青木コーチ(中央)、金剛コーチ(左)が坂田監督を支え、指導体制が確立されている
「頂点」を極めたチームには、確固たる強さの裏付けがある。11月14日、立正大は第49回明治神宮野球大会で9年ぶり2度目の優勝。2013年4月から母校を率いる坂田精二郎監督は、社会人・シダックスで野村克也氏の薫陶を受けたことで知られる。情報を収集した「ID野球」と「守り勝つ野球」をチームに浸透させた。
立正大は昨春の東都一部二部入れ替え戦で、一部最下位の専大を下して、15季ぶりの一部復帰を決めた。昨秋、今春、秋と昇格3シーズン目で一部リーグを制し、秋日本一のタイトルを手にしたわけであるが、それはなぜか。坂田監督を側面からバックアップする、有能なコーチ2人の存在が大きかった。
背番号51を着ける
青木智史コーチは、神奈川県屈指の進学校・小田原高を経て98年ドラフト6位で
広島入団。プロで3年プレーした後は社会人クラブチーム、企業チーム、独立リーグに在籍し、多くの経験を積んだ。社会人・セガサミー時代の同僚だった坂田監督の下で、立正大コーチとなったのは16年である。
「監督は『守り勝つ野球』の中で、守りを中心に見ていますので、私は攻撃力アップのための指導をしています。役割分担が明確であり、3人の連携が取れていると思います」
投手部門を一手に任されているのが、背番号52の
金剛弘樹コーチだ。帝京高、立正大を経て朝日生命に入社。同部の休部に伴い、日本通運へ移籍し、05年ドラフト9位で
中日に指名された。12年までプレーし、現役引退後は一般企業で働いていたが、坂田監督からの熱烈オファーにより、17年秋から指導している。
「坂田さんは4学年上で、大学でともにプレーした経験はありません。朝日生命で都市対抗に出場した際、シダックスからの補強選手で、坂田さんとバッテリーを組んだのが縁。野球観が合っていると言いますか、やりがいがある」
神宮大会制覇の立役者となった2年生エース・
糸川亮太(川之江高)には、ビックリするようなスピードボールがあるわけでもない。それでも、打者はタイミングを外される。全投手に共通して、金剛コーチは「口酸っぱく、どの変化球でストライクを取れるように指導しています」と語る。
「東都における戦いでは、2ボールから変化球でカウントを整えられる精度がないと、勝負にならない」
低めにボールを集め、困ったときはアウトロー。これは、坂田監督を通じて聞いた野村氏の教えである。
金剛コーチは立正大サイドの一塁スタンドを見上げて言った。
「ここ最近は5位、最下位(争い)とかばかり……。こういった光景を見られたのは、今後にもつながる。新たな歴史を刻んでいきたいと思います」
百戦錬磨の社会人野球で磨かれた坂田監督に、元プロのコーチ2人による3人の絆は固い。このほかにも、部員と年齢が近い佐藤大吾コーチ、寮監を兼務する綿引啓太コーチが兄貴分的存在。充実の指導体制こそが、立正大の強さの秘密だ。
文=岡本朋祐 写真=山口高明