背番号は、ある選手が引退しても、またある選手に受け継がれていく。2019年も新たな後継者が誕生した。その歴史を週刊ベースボールONLINEで振り返っていく。 阪神の皮肉
「28」が一躍、脚光を浴びたのは1967年、阪神で高卒新人ながら奪三振王となった江夏豊の登場によって。翌68年にはシーズン401奪三振の世界新記録を樹立、その後もV9
巨人に立ち向かい、特に
王貞治とは名勝負を繰り広げた。
江夏は阪神を放出されると“流浪の左腕”となって二度と「28」を着けることはなく、阪神も左腕には「28」を与えなかったが、その穴を埋めるように巨人で
新浦寿夫(壽夫、壽丈)が、
中日では
都裕次郎が台頭。奇しくも阪神以外のチームで“ポスト江夏”と言うべき左腕が活躍するようになる。
特にライバルの巨人では左腕の多い系譜となり、近鉄から加入した
阿波野秀幸やメジャーでも活躍した
岡島秀樹がリレーした。パ・リーグで特筆すべきは90年代に
オリックスの連覇に貢献した
星野伸之だ。阪急時代に「53」から「28」へ“昇格”し、スローカーブを武器に通算176勝を積み上げた。
一方、江夏より前は中日の
中山俊丈ら左腕は少数派で、むしろ右腕が目立つ。2リーグ分立期には西鉄に
野口正明、南海に
大神武俊らタイトルホルダーにもなった右腕がいた。江夏の放出後は逆に右腕の系譜となった阪神では、
長谷川勉を経て
中田良弘が長く背負い、さらに長かったのが
福原忍。そして現役の
小野泰己まで、誰ひとりとして左腕はいない。
【12球団・主な歴代「28」】
巨人 新浦寿夫(壽夫、壽丈)、
広田浩章(廣田浩章)、岡島秀樹、
畠世周、
田口麗斗☆(2019年~)
阪神
青木正一、江夏豊、中田良弘、福原忍、小野泰己☆
中日 中山俊丈、
河村保彦(達彦)、
江藤省三、都裕次郎、
梅津晃大☆(2019年~)
オリックス
住友平、星野伸之、
小松聖、
塚原頌平、
富山凌雅☆(2019年~)
ソフトバンク 大神武俊、
林俊彦(俊宏)、
渡辺正和、
大隣憲司、
高橋礼☆
日本ハム 吉田勝豊、
二村忠美、
正田樹、
新垣勇人、ハンコック☆(2019年~)
ロッテ 白川一、
村上公康、
園川一美、
加藤康介、
松永昂大☆
DeNA 松岡功祐、新浦壽夫、
秦裕二、
福地元春、
勝又温史☆(2019年~)
西武 野口正明、
田中久寿男、
竹下潤、
藤原良平、
森脇亮介☆(2019年~)
広島 高橋千年美、
衣笠祥雄、
西田真二、
瀬戸輝信、
床田寛樹☆
ヤクルト 瀬戸昭彦、
星山晋徳、
八重樫幸雄、
川本良平、ブキャナン☆
楽天 金田政彦、
片山博視、
石橋良太、
小野郁☆
(☆は2019年)
鉄人28番

広島・衣笠祥雄
一方で、南海を経て広島へ移籍した江夏の盟友となった衣笠祥雄が若手時代に着けていた背番号でもある。捕手ナンバー「27」に続く背番号であるためか、特に60年代は捕手が散見され、衣笠も入団時は捕手だった。
捕手で忘れてはならないのがヤクルトの八重樫幸雄だろう。
大矢明彦の陰に隠れて第2捕手が長かったが、80年代中盤には正捕手に。
古田敦也が台頭してからも控えや代打の切り札として存在感を発揮。実働23年は衣笠と並んで長くセ・リーグ記録だった。
ちなみに、あまりにも有名な衣笠の愛称“鉄人”は「28」時代からのもので、連続試合出場を支え続けた頑強さではなく、当時の人気アニメ『鉄人28号』が由来。八重樫も最長となる24年の長きにわたって「28」を背負い続けた“鉄人”捕手で、メガネにヤクルトの青いヘルメット、プロテクターを着けた姿は衣笠よりも“本家”に近い(?)。
写真=BBM