今季、開幕からパ・リーグで打率上位を走る森
秋山翔吾や
山川穂高など、球界を代表する好打者がそろっている
西武打線の中でチーム上位の打率を誇るのが
森友哉だ。7月3日終了時点で打率.3265で
ロッテの
荻野貴司の.338、西武の秋山翔吾の.3267に次いで3位。フルスイングが持ち味の森だが、今年は開幕からバッティングが安定しており、「もしかしたら首位打者に……」と考えているファンも多いだろう。そこで今回は、森と同じく「打てるキャッチャー」だった偉大な先輩たちと森の成績を比較し、森のタイトル争いの行方を検証してみた。
過去に首位打者のタイトルに輝いた捕手は3人
日本プロ野球の歴史をひもとくと、首位打者のタイトルを獲得したキャッチャーはわずか3人しかいない。最初に首位打者に輝いたのは、南海時代の
野村克也。1965年シーズンの野村は、打率.320で首位打者を獲得するだけでなく、本塁打42本、打点110で戦後初の三冠王になった。
野村の次に首位打者のタイトルを獲得したのは元
ヤクルトの
古田敦也だ。師匠と弟子がともに首位打者を獲得しているのはなんとも興味深い。1991年、入団2年目の古田はこの年、攻守両面で大活躍を見せ、
中日の
落合博満と終盤まで激しい首位打者争いを展開。最終的に3毛差(古田が打率.3398、落合が打率.3395)で首位打者のタイトルに輝いた。
巨人の
阿部慎之助も、2012年に打率.340を記録して首位打者のタイトルを獲得している。阿部は104打点で打点王も獲得しており、見事に二冠達成。本塁打もトップの
ウラディミール・バレンティン(ヤクルト)に4本差の27本と、三冠王も夢ではない成績だった。
上記の3人の成績を以下にまとめてみた。
1965年の南海・野村克也
●野村克也(1965年)
打率:.320
試合:136
打数:488
得点:92
安打:156
二塁打:27
三塁打:1
本塁打:42
打点:110
盗塁:3
1991年のヤクルト・古田敦也
●古田敦也(1991年)
打率:.340
試合:128
打数:412
得点:58
安打:140
二塁打:23
三塁打:5
本塁打:11
打点:50
盗塁:4
2012年の巨人・阿部慎之助
●阿部慎之助(2012年)
打率:.340
試合:138
打数:467
得点:72
安打:159
二塁打:22
三塁打:1
本塁打:27
打点:104
盗塁:0
一方、今季の森の成績は次のようになっている。
●森友哉(7月3日終了時点)
打率:.3265
試合:71
打数:245
得点:45
安打:80
二塁打:17
三塁打:2
本塁打:7
打点:48
盗塁:3
これまで1試合に約1.12本の割合で安打を放っており、このペースだと最終的に143試合で160安打という計算になる。現在の打率ランキングは3位だが、もしこのまま.3265の打率で終えることができれば、先輩3人が首位打者に輝いたときに匹敵する成績になるだろう。
過去10年の首位打者の平均打率.337
では、最終的にどのぐらいの打率を残せば、首位打者になれる可能性が高まるのだろうか。過去10シーズンの首位打者の平均打率を調べてみた。
・2018年
柳田悠岐(
ソフトバンク)打率.352
・2017年 秋山翔吾(西武)打率.322
・2016年
角中勝也(ロッテ)打率.339
・2015年 柳田悠岐(ソフトバンク)打率.363
・2014年
糸井嘉男(
オリックス)打率.331
・2013年
長谷川勇也(ソフトバンク)打率.341
・2012年 角中勝也(ロッテ)打率.312
・2011年
内川聖一(ソフトバンク)打率.338
・2010年
西岡剛(ロッテ)打率.346
・2009年
鉄平(
楽天)打率.327
平均打率:.337
過去10シーズンの首位打者の平均打率は.337となった。2015年のように.363と高いアベレージの年もあれば(この年は打率2位の秋山も.359と高かった)、2012年のように.312とやや低めの年もあるが、ひとまずはこの平均値を目標にするべきだろう。
仮に森の最終打率が.3265のままであればこの平均値を下回ることになる。もちろん、どこかで一気に調子を上げて、平均値以上の打率になる可能性もゼロではない。かつて首位打者に輝いた阿部は、シーズン後半の9月に月間打率.447を記録して首位打者のタイトルをほぼ確実なものとした。森が首位打者になるには、こうした後半戦での奮起が求められるだろう。
ちなみに、キャッチャーのポジションで出場しながら打撃タイトルを獲得した選手は、最初に挙げた3人以外では1975年に
阪神の
田淵幸一が本塁打王になったくらいで、ほかにはいない(1993年に古田が阪神の
和田豊と同数で最多安打を記録。ただし部門設立前のため表彰はなし)。実はキャッチャーの打撃タイトル獲得はかなりレアケースなのだ。
キャッチャーはチームの頭脳となるポジション。そのため、ほかのポジションと比べて打撃だけに集中できず、バッティングで結果を出すのが難しいといわれている。そんな中で首位打者争いをしていると聞けば、あらためて森のすごさが実感できるだろう。まだまだ先は長いが、史上4人目のキャッチャーの首位打者が誕生する可能性は低くはない。
文=中田ボンベ@dcp 写真=BBM