昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 豪華新年号は意外とネタがない?
今回は『1969年1月6日新年特大号』(初出修正)。定価は80円。
巻頭は長嶋茂雄、
王貞治の豪華対談からスタート。
新年号というのは、豪華なインタビュー、豪華な寄稿文が多く、興味深いと言えば興味深いのだが、意外と、当たりさわりのない話が多く、ここに書くような裏ネタがない(へえ、そうだったの的な発見)。
少しぼんやりした話になるが、ご理解を。
その中に退任した元南海・
鶴岡一人監督の手記で「ゲンコツ問題」もあった。
「
広瀬叔功や
野村克也、
森下整鎮などは金をもらわんで入っている。野球をやらねば金をもらえん、という状態だった。野球を覚えて金を稼ごうと必死だった。だからゲンコツに耐えた。そうして野球がうまくなった。
いまの選手は金を持っている。だからゲンコツは通用しない。コーチが手を出せば反発して問題が起こる。殴られるならプロ野球をやめて、何か商売しようか、になる。
昔は僕らもゲンコツを使った。今は使えない。それで問題が起これば、コーチの育て方が悪い、ということになる。選手には金を使っている。それにやめられてはかなわんから、コーチのほうが悪役になって、クビになる。
だからコーチは思い切った指導ができない。むしろ保身のため派閥をつくろうとする」
先日、貴ノ富士が「言葉で何度も言ってもきかないとき、どうすればいいか教わっていない」と言った話を思い出した。
この力士がどんな人かは不勉強にしてよく分からないが、報道を見る限りでは、ロクなもんじゃない。
ただ、それとは別に、部下や理不尽なクライアントの要求、電話クレームに対し、同様の思いをされた方は意外と多いようにも思う。
続いて、落語家・立川談志の「野球を楽しくするアイデア集」を抜粋しよう。後年のイメージのような毒舌ではなく、いわゆる新春放言的なものだ。
原稿は、
「野球なんてないほうがいい」
からスタートする。否定論ではない。要は、野球が好きすぎて、野球があるとそれに夢中になり過ぎ、これに費やす時間がもったいない、という話だ。
談志的提言が並ぶ。列記してみよう。
・投手はどう打たれても、その回はチェンジになるまで投げ切る。
・ベース間を短縮する
これは打ち合いが野球の魅力と考えてのもの。
・外野の塀を取り外す。
チャチなホームランを見たくないということらしい。さらに、球が返ってくるまで、打者はフィールドを何周でもでき、一打で何打点も挙げることができる。
・投手交代を演出する。
ナイターだが、投手交代時、一瞬球場のライトが消え、次にスポットライトが当てられたマウンドで次の投手がテーマミュージックとともにせりあがる、らしい。
・ランナーがいないときは一塁でも三塁でも好きなほうに走っていい。
・乱闘を奨励しよう。
・外人悪役チームをつくろう
反則の限りを尽くす外人チームに我慢に我慢を重ねた日本人チームが最後逆転すればすっきりする
・野球のプロダクションをつくる。
チームとは別に選手を養成し、弱いチームに貸してやる。
・オフに野球ファンの金持ちが好きなようにチームをつくる。
監督、選手を自分で選んで夢のオールスターをつくる。しっかりお金を払えば、選手もいいアルバイトになる。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM